白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ9)

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〝人狼〟といえば、Aがこれまで生きてきた世界の中でも、絵本や物語でファンタジーとして登場する生物だ。

その姿は大抵、狼の頭と獣の後ろ足を持ち、二本足で直立し、全身が体毛に覆われた姿で描かれる。それらは必ず凶暴な姿でいて、人や生き物を平気で襲ってしまう恐ろしいものだと記されていた。

____目の前の彼からは〝凶暴〟〝恐ろしい〟という文字は思い浮かばなかったが、セブルスの嫌悪感剥き出しの態度からは何か嫌な記憶でもあるのかと思えた。

セブルスはそのまま、Aの母親についても教えてくれた。

かつて〝ヴォルデモート卿〟と呼ばれる闇の魔法使いが存在し、マグルや魔法族を多く殺め人々を恐怖やパニックに陥れながら世の中を支配していた。

友達想いで優しく、聡明で頼もしいロキ・グレイディは魔法薬師という職を持ちながらも、友の為にと〝ヴォルデモート卿〟への反対勢力側に付いた1人の魔女であった。

年々増していく闇の勢力に屈することなく向かっていき、恋仲であったリーマス・ルーピンと別れた後、妊娠がわかっても尚、自分の子どもを孤児院に預けながら戦うことと魔法薬師としての務めを辞めなかった。

また、後に評価されるが、この間に〝脱狼薬〟の研究のヒントを編み出し、ダモクレス・ベルビィという有名な魔法薬師との研究を進めていた。

Aが産まれて3ヶ月がたった頃の1981年10月31日に、〝ヴォルデモート卿〟はまだ一歳のハリー・ポッターという子どもに〝死の呪い〟を唱えたが何故だか自分に跳ね返り、消滅してしまう。

しかしその真夜中、仲間の護衛に当たっていたロキは仕事仲間と撤退している最中に自分の両親の仇である〝アントニン・ドロホフ〟という〝死喰い人〟に命を奪われてしまった____

ロキはAを産むことを強く願い、またそのことを秘密にする様に伝えていた為、セブルスはそのまま孤児院にAを預け、〝後見人〟として忙しい仕事の傍らAを見守り続けてきてくれたのだ。

「問題は、これからAに〝人狼の血〟がどれほど強く出てくるかだ」

『僕は何て愚かなことをしたんだ』

『浅はかだった』

『あの時、最後まで彼女を突き放していれば__』

〝人狼の血〟が受け継がれてしまっていることに、リーマス・ルーピンが強く後悔している声が、Aの頭の中に流れてきた。

まるで自分の存在を否定されているようで、酷く悲しかった。