白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ12)

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〝ダイアゴン横丁〟という魔法界の街に繋がる道は、なんとAが寝泊まりしている〝漏れ鍋〟の裏にあった。

フリットウィック先生が、裏庭の壁の特定の煉瓦を杖で叩くと瞬く間に煉瓦が動き出し___〝魔女〟や〝魔法使い〟でいっぱいのショッピングストリートのアーチに変身した。

そこをくぐると、両サイド、前方に見た事のない物や興味深い物などが置かれたお店が沢山あり__ホグワーツの生徒だろうか___Aと同い年か、年上の子ども達も沢山いた。

「8月に入ったから__みんな、学用品を買いに来ているのだろう。随分と混んでいるね」

Aは、ずんずんと進んでいくフリットウィック先生を見失わない様に、必死に彼から目を逸らさずに足を進めた。興味深いお店は、これから〝漏れ鍋〟で毎日過ごすのだから近いうちにウィンドー・ショッピングでもしてもいいと思ったのだ。

2人がまず先に向かったのは、グリンゴッツ銀行という魔法界のお金を管理する施設だった。

そこは、〝小鬼〟が全てを経営・管理している場所であり__厳格そうなその姿がそうさせるのか、銀行の空気はとても重々しく、シンとしていた。

フリットウィック先生にも〝小鬼〟の血が半分流れている様であったが、チャーミングな彼とは正反対の顔付きに、Aは彼らとは親し気に喋ることは出来ないなとすぐに感じた。

「グレイディ家の金庫をお願いします__こちらは、当主のA・グレイディです」

小鬼に何やら鍵を渡しながらそう告げたフリットウィック先生の言葉にAは耳を疑った。

「__当主！？」

「君はグレイディ家の唯一の生き残りなのだよ__当主の手続きは全てセブルスが済ませてくれているから、何ら難しいことはない。肩書き程度に思っているといい」

Aは唖然としながらも、小鬼とフリットウィック先生に続いた。

しかし、驚きはさらに続くこととなる____グリンゴッツ銀行の金庫はマグルとの世界とは違い、地下の奥深くにあった。グレイディ家の金庫に行くにもトロッコに乗らなければ辿り着かないのだが、その運転の荒さといったら。

フリットウィック先生が直前に、『酔い止めに』と呪文を掛けてくれていなければ確実に朝食べた物が胃から出ていただろう。

グレイディ家の金庫を開けた時、Aはあまりにも膨大な量の金貨に息を飲んだ。

フリットウィック先生いわく、有名な魔法薬師だった祖父と母親が残した遺産は__A1人の暮らしではとても使い切れそうにない程だった。