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困惑 ページ34

……まだ、額に、銀ちゃんの唇の感触が残っていた。今、目の前でポカンとバカみたいに開けている、それ。消えないその感覚が、今起きた出来事を、私に現実だということを示している。まだ夢の中なんじゃないかと疑う私を、分からせるかのように、残ったぬくもりがまだ存在する。


「…え、え……」


困惑。正にこの言葉が今の私にはぴったりと当てはめられていた。まるで、今の私のためにあるような言葉みたいに。小さく漏れる私の声は、自分で聞いていても本当に間抜けた声だった。

紡ぐ言葉が見つからない。まともな声すら出てくれない。掠れた声ばかりが、その部屋には響いていた。


銀「……、」

「…銀、ちゃ…?」


状況が全く飲み込めない。私の目の前でただつったっている銀ちゃんを、私は真っ赤に染まっているのであろうそんな顔で見上げていた。目を逸らすことさえ忘れていた。最近ずっと、さっきもずっと、全然目が合わないと不安を抱えていたことが嘘のように、今の私達はこれでもかと言うほどに視線を絡めている。


殆ど吐息のような声で、なんとかソイツの名前を呼んでみる。すると、ピク、と、銀ちゃんは肩を揺らした。何を考えているか読めないその目が、今はなんだか、焦り……のようなものを映しているように見えた。


「…何、今の……」


漸くちゃんとした呂律が回ってきた。それでも震えている声でなんとかそんな言葉を絞り出す。


無意識に、私の手は先程銀ちゃんが口付けた額へと伸びていく。


「…なんで、…したの…」


…きす、と。


その単語を口にするのがなんだか照れ臭くて、小さくそう呟くように言う。馴れないのだ、こういうことは。


『Aのことが好きだよ』


……さっき聞こえた、この言葉は、銀ちゃんの本当の言葉?それとも、私が見ていた夢の続き?


夢にしては随分と鮮明に聞こえていた。けれど、そんな私にとって都合のいいことが起こりうるのか。


そう考えると、……悲しくも私は後者の方なのではと思ってしまう。つまるところ、私は自分に自信がないのだ。


だから、……簡単に真に受けてしまうことが怖いのだ。


銀「……」

「……黙ってないで何か言ったらどうなのよ……」


さっきから何一つ言葉を発しない銀ちゃんに私はそう言う。気まずすぎるだろう。何でもいいから何か言ってほしかった。


……私の質問の答えが聞きたかった。


額にあった手を膝の上に置いて、両手を握り締めた。手が震えてやってられない。逸らしたい目をなんとかずっとソイツの目に合わせ続ける。なんだか、色んな意味で死にそうになりながら。

教えてよ→←真に受けて



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
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廣岡唯 - 頑張れよ待ってるよ (12月26日 20時) (レス) @page1 id: 4e412208c6 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - ピピコさん» 待ってます! (2017年6月16日 21時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - さなさん» わわ!さなさん!コメントありがとうございます!!物語が今最大級に盛り上がっています!!(多分)頑張らせて頂きます!! (2017年6月16日 20時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - すごく続きが気になります!頑張ってください! (2017年6月16日 19時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 千日紅さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも少しでも素敵な物語を書けるよう頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございます!! (2017年6月16日 14時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2017年5月27日 20時

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