都合のいい夢 ページ32
Aside
ー・・・酷く、都合のいい夢を見ていた。
銀ちゃんがジャンプを買いに出掛けてからも、私はずっとソファーに深く腰かけて一人でああだこうだと頭を悩ませていた。どうしたら、銀ちゃんに気持ちを伝えられるか、せめて、普通に話せるようになれたらって。
もうこの際、高望みなんてしないで、この気持ちは心のうちに押しとどめておこうか、それでもいいのか。それはただ、私が逃げたいだけなんじゃないか。そんなことばかりをグルグルと巡らせているうちに、どうやら私は眠りに落ちてしまっていたようで。
……夢の中では、いつもの万事屋。
でもいつもと違うのは、私と銀ちゃんが手を繋いで、頬を綻ばせて幸せそうに笑っているところ。この映像を瞼の裏で見た瞬間、あぁ、これは夢だなって、すぐに理解した。夢でも随分と冷静な頭だなと内心苦笑しながらも、私はその夢の中だけの幸せを噛み締めておくことにした。どうせ目が覚めたら、通常に戻るんだ。夢でくらい、いいよね、って。
……夢の中だっていうのに、私に触れる銀ちゃんは随分とリアルで。ふわりと頭に乗る大きな手の感触も、頬を撫でる体温も、声も、現実……、って私が言っていいのかは分からないけれど、本物の銀ちゃんのものみたいに思えて、それが私をどうしようもなく幸せに、そして同時に寂しくさせた。
だって、この夢が終われば、この温度も、この距離も、全部全部戻ってしまうから。ずっと、銀ちゃんとこうしていられたら、って。そんなことを思ってしまった。
…覚めなくていい、なんて思ってしまった。
でもそのうち、その景色はだんだんと薄れて、ぼやけていって、そんな幻想はすぐに私を現実へと引き戻していく。「あぁ、終わっちゃうな」なんて、名残惜しさを感じながらも、瞼の裏に流れる夢は、少しずつ消えていく。
ー・・A、
と、まだまどろんでいる意識の中で、聞き慣れた声がした。聞くだけでなんだか安心するような、低くて気だるそうなその声は、私の耳へと柔らかく響いていく。
…まだ私は、夢の中なのかな。意外とすぐ近くで銀ちゃんの声がする。
でもその割りに、体温が鮮明に感じられて。頬のあたりのぬくもりが、なんだか心地よくて。夢と現実の境目すら、分からない状態だった。
でも、その声を聞いているだけで、また何処か幸せな気分になる。その体温が、私の心を優しく撫でる。
…あぁ、まだ夢の中なら、あともう少しだけ、
ー・・好きだよ
…なんて言葉も聞こえてくる始末。これが現実なら、どれだけ良かっただろう。
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廣岡唯 - 頑張れよ待ってるよ (12月26日 20時) (レス) @page1 id: 4e412208c6 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - ピピコさん» 待ってます! (2017年6月16日 21時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - さなさん» わわ!さなさん!コメントありがとうございます!!物語が今最大級に盛り上がっています!!(多分)頑張らせて頂きます!! (2017年6月16日 20時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - すごく続きが気になります!頑張ってください! (2017年6月16日 19時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 千日紅さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも少しでも素敵な物語を書けるよう頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございます!! (2017年6月16日 14時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年5月27日 20時