愛しさに 銀時side ページ30
それにしても、Aは一体何をしているんだろうか。まさか無視か。無視なのか。それとも何処かへ出掛けてしまったのか、と。そんなことをぐるぐる頭に巡らせながら廊下を進み、事務室へと繋がる扉を開けた。
銀「おーい、A……」
Aの名前を呼びながらそう呟くと、すぐに視界に入ったそれに、俺は続けるはずだった言葉を遮った。開け放った窓から吹き抜けていく風が、心地いい温度を部屋へと運び、髪を揺らした。俺の銀色の髪も、そして、
「…すぅ、すぅ……」
…ソファーに腰かけて眠りこけている、Aの髪も。
銀「……寝てんのかよ…」
取り敢えず無視はされていなかったことになんとなく安堵の溜め息を漏らした。そして、気持ち良さそうに眠っているソイツの寝顔を見つめては、自然と顔が揺るんじまう。それを隠したくて右手で口を覆った。まぁ、別にここには誰もいないから隠す必要はないと言えばないのだが、なんというか、俺のプライドが許さないのだ。
左手にぶら下げていたジャンプが入ったビニールを机の上に置き、続いて和室の襖を開けて押し入れから肌かけを取り出した。それをAにふわりと掛けてやった。風邪引かれちゃ困るしな。
「……すぅ、すぅ……」
規則正しいリズムで寝息をたてるA。無防備すぎんだろーがバカと小突きたくなるが、あまりにも幸せそうな面にそんな事が出来る訳もなく。
銀「ったく……起きたら説教だなコイツ…」
「…ん〜…」
と、俺がポツリと呟くと、ソイツはそんな声を出して軽く寝返りをした。起こしてしまったかと思ったが、未だAは目を瞑ったままだった。それにホッと胸を撫で下ろしていれば。
「……ん、……銀、ちゃ、ん…」
銀「………え、」
……寝言だろうか。ソイツは俺の名前を呼ぶなり、
銀「…っ、」
…いつかのように、まるで、花が咲く瞬間かのような柔らかい笑顔を浮かべたのだ。それに、胸が疼いちまうのは言うまでもなく。
……あーぁ、なんなのこの子。
そんな笑顔を見てしまっては、もう俺にはどうしようも出来ない引力が、俺の手をAへと伸ばされる。自然と伸びたその手は、風にふわふわと揺れている髪に触れた。
指通りがよくて、柔らかな髪を優しく撫でて、俺はまた頬を綻ばせてしまう。隠すことも出来ず、溢れ出してしまう愛しさに。
今の俺の面はきっと、コイツに見せられたもんじゃねーだろうな、と。俺はそう思い内心苦笑した。
226人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
廣岡唯 - 頑張れよ待ってるよ (12月26日 20時) (レス) @page1 id: 4e412208c6 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - ピピコさん» 待ってます! (2017年6月16日 21時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - さなさん» わわ!さなさん!コメントありがとうございます!!物語が今最大級に盛り上がっています!!(多分)頑張らせて頂きます!! (2017年6月16日 20時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - すごく続きが気になります!頑張ってください! (2017年6月16日 19時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 千日紅さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも少しでも素敵な物語を書けるよう頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございます!! (2017年6月16日 14時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年5月27日 20時