待ってよ ページ18
銀「今週のジャンプ、買いに行ってくるわ」
「…え、あ、そう……」
そう言うと銀ちゃんは腰かけていた社長椅子から立ち上がり、無造作に机の上に読んでいたジャンプを置いた。どうやらさっきから読んでいたのは先週のジャンプだったらしい。
ていうかジャンプ買うお金があるなら家賃に回した方がいいと思うのだが取り敢えず今の私にはそんなことすら言う勇気もない。どうしようもない、本当に。
銀「……お前なんか、欲しいもんある?」
「え、ぅ、うーん……」
私の、欲しいもの。
……銀ちゃんに、「好き」って伝えられるだけの勇気が、今の私には欲しい。それだけでいい。ほんの少しだけでいいの。
でも、そんなこと言える訳もなく、「特には」なんて、折角の会話をそんな短い言葉で終わらせてしまった。もう少し引き延ばせばよかったと後悔するも、もう遅い。
銀「…そ。…じゃ、ちょっと行ってくらァ」
「……」
私の座っているソファーの前を素通りしてそう言いながら銀ちゃんは廊下へと足を進めようとする。
こんなに近くにいるのに、手を伸ばしたらすぐに触れられるほどの距離なのに、どうしてだろうか。……こんなに、遠く感じてしまうのは。やっぱり、私と銀ちゃんの生きる世界が違うから?そう思うと更に遥か遠くの存在になってしまいそうで怖くなる。
私の前を通りすぎようとする銀ちゃん。一度も、目なんか合わなくて。
「……っ…」
ー・・待ってよ、
銀「…っ!」
……そう思った瞬間、私は無意識に手を伸ばしていて、銀ちゃんの着物をギュッと掴んでいた。本当に意図したものではなく、無意識に。
銀ちゃんの驚きに満ちた目が私を見つめる。私は私自身が起こした行動に驚きながらも、その目を見返す。
やっと、やっと目があった。
銀「……どうした?」
「…えっと……あの、さ……」
着物に触れた手に自然と力が入ってしまう。目線を慌てて床に落として、必死に自分に言う。
…今だよ、言うなら今しかないよ。
「……いや、なんでもないや」
銀「……そうか?」
ヘラリと私は笑ってそう言った。
ごめん、本当はなんでもなくなんかないのに。言いたいことがあるのに、言えないや、やっぱり。
「ごめんね変に引き留めて、いってら」
銀「あ、あぁ、行ってくるわ」
そんな淡々とした会話をして、私は銀ちゃんの背中をなんとなく見送った。
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廣岡唯 - 頑張れよ待ってるよ (12月26日 20時) (レス) @page1 id: 4e412208c6 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - ピピコさん» 待ってます! (2017年6月16日 21時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - さなさん» わわ!さなさん!コメントありがとうございます!!物語が今最大級に盛り上がっています!!(多分)頑張らせて頂きます!! (2017年6月16日 20時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - すごく続きが気になります!頑張ってください! (2017年6月16日 19時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 千日紅さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも少しでも素敵な物語を書けるよう頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございます!! (2017年6月16日 14時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年5月27日 20時