覚悟を ページ13
目の前のポーカーフェイスの沖田を真っ白になった頭を携えた私はただ呆然と見つめていた。『帰るべき時が来る』なんて、当たり前なことを今更理解せざるを得なくなったことに混乱しながらも、私は「まさかコイツが私の頭に手ぇ乗っけるなんて」と、そんなことを気休めに思っていた。
私がそんなどうでもいいことを思い浮かべているなんてことを知るよしもないソイツは、無造作に、雑に私の頭をひと撫ですると再び口を開いた。
沖「言いてぇことがあんなら言えばいい、後悔したくねーんなら今のうちに伝えてぇこと伝えねぇと、手遅れになるぜィ」
私に言い聞かせるかのように、忠告するかのようにそう告げると、すたすたと歩き去って、街を行き交う人並みに姿を消して行った。
その後ろ姿が見えなくなるまでなんとなく見送ると、私は漸く正常に動けるようになったらしい頭を必死に働かせる。
(…そっか…)
…沖田の言葉が、私の心にストンと素直に降りてくる。
私はきっと、遅からず早からず、いつになるかは分からないけれど、そのうち元の世界に帰ることになるのだ。忘れかけていたけれど、それは逃れようのない事実で、受け入れないといけない。
…それなら、私はどうするべきなのか。
…そんなもの、考えなくても決まっているじゃないか。
「…覚悟、決めなきゃ…」
後悔したくないのなら、ぶつかるしかない。もし伝えて砕けることになったとしても、伝えたいことは伝えないといけない。
確かに私は、銀ちゃんが生きるこの世界とは違う世界の人間で、もしかしたら、私が銀ちゃんを想うことは、許されないことなのかもしれない。元々、私達は出会うことなんてなかったはずなのだから。
それに、気持ちを伝えて、もしかしたら私の気持ちが、銀ちゃんにとって迷惑なものになるっていう可能性もある。
…だって、私はそのうちいなくなるんだから。もし仮に、私の気持ちが報われて、恋人とかいう関係になれたとしても、それを永遠と約束することなんて出来やしない。
……でも、そんなことはどうでもいい。だって仕方ないじゃない。出会ってしまったんだから。仕方ないじゃない。
…好きになってしまったんだから。
もう引き返せやしない。
誤魔化せやしない。なら、
…伝えよう、近いうちにきっと。銀ちゃんに「好き」って伝えるんだ。
私はそう心に決め、夏が近づく青い空を仰いで、心の中で悔しいが沖田にありがとうと呟くのだった。
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廣岡唯 - 頑張れよ待ってるよ (12月26日 20時) (レス) @page1 id: 4e412208c6 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - ピピコさん» 待ってます! (2017年6月16日 21時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - さなさん» わわ!さなさん!コメントありがとうございます!!物語が今最大級に盛り上がっています!!(多分)頑張らせて頂きます!! (2017年6月16日 20時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - すごく続きが気になります!頑張ってください! (2017年6月16日 19時) (レス) id: 2e2daa92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 千日紅さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも少しでも素敵な物語を書けるよう頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございます!! (2017年6月16日 14時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年5月27日 20時