42.夢のよう ページ42
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「えぇー。」 「まだ時間あるやん」 「先生早ない?」
「ちょ、うちまだ先輩と話せてないんやけど…!」
至る所から不満そうな声が聞こえてくる。
え、もう帰る時間なの??
少しずつ集まっていく生徒を見ながら口を噤んでいると、
ぽん、と大きな手が頭の上に置かれた。
「Aちゃんも行きな。置いてかれちゃうよ」
「うん……」
まるで、ちっちゃな子ども相手に言い聞かせるような感じで
優しく言われる。
まさかこんなにも離れ難いなんて。
私は自分が思っている以上に彼が好きなのかもしれない。
「お友達すっごいこっち見てるし」
「え?……あ、ほんとだ」
角名くんの視線の先を見ると友人が満面の笑みで
Aーー!!と手をブンブン振っていた。
腕取れそう。なんて二人して笑い合った。
そんな友人の元気な姿のおかげか。
重たくなっていた気持ちが徐々に軽くなる。
「じゃあまたね」
「うん。また学校で」
「ん。気をつけて帰りなね」
「ありがとう。角名くんもお疲れ様、ゆっくり休んでね」
別れ際、そう言って笑いかけると、
角名くんはもう一度頭を優しく撫でて笑ってくれた。
バレー部や応援団の皆さんとお別れをして東京の会場を後にする。
学校へと帰る途中、友人に角名くんとの事を問だたされ、
隠すことなく照れながら全て話した。
彼女は自分のことのように興奮して。
周りを気にせず大声で叫んでは抱き着いてきた。
あとでもう1人の友人(吹奏楽部)にも、
お疲れさまの連絡と角名くんとの事を報告しよう。
あ、そういえば。
最後のほう角名くんを独占しちゃってたけど良かったのかな?
他にも彼と話したい人がいたんじゃないだろうか。
例えば、あの眼鏡をかけた叔父さんとか。
叔父さんも角名くんとお話できてたらいいな。
なんて、ちょっぴり思った。
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作者名:. | 作成日時:2020年1月29日 23時