32.動揺 ページ31
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角名くんの言葉が嫌なくらい頭に響く。
もっと触ってもいいって。
そんな、いやいや……
「で、できるかっ！」
やっとの思いで言った言葉は少し荒ぶっていた。
えー、と私に向けられた目の前の意地悪な笑顔は、
やっぱり色っぽくて怪しげなままだ。
「自分から触ってきたくせに」
緩く指を絡められながら挑発するように呟かれた言葉に
〜〜〜ッッ！！と言葉にならない悲鳴を上げた。
つくつぐ角名くんはずるいと思う。
大人のような雰囲気で。見透かされるような瞳で。
誘い込むような言葉と落ち着いた声で。
そのすべてを上手く使って自分の活かし方を知っている。
ずるくて。かっこよくて。魅力的で。
見るからに厄介なのに、だからこそ落ち着かない。
「手、放して？」
「やだよ」
「いやこんなの変に勘違いし……あっ」
ハッとして慌てて口を噤む。
しまった。今かなりやばいこと言った。
角名くんに聞こえるんじゃないかってくらい、
心臓が大きな音を立てて動く。
「勘違いすればいいよ」
「………は、」
「勘違いして沢山困って俺を意識しちゃえばいい」
「またそう意地悪なこと言う」
「うん。そうだね」
むっと険しい顔をしていると「ははっ可愛い」とからかわれた。
「角名くんそれ他の子にも言ったりするの？｣
その、可愛いってやつ。
弱々しく控えめの声で真っ直ぐに彼を見上げながら問いかける。
体育館中の音がやけに遠くに聞こえて、
うるさいくらいの心臓の音だけが響く。
私の突然の問いかけに彼は表情を一変して真剣な顔をしながらそっと口を開いた。
「言わないよ」
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作者名：. | 作成日時：2020年1月29日 23時
