30.いいよ ページ30
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「角名、試合は」
「あーさっき負けた」
「何しとんねん!」
お前それでもバレー部か!と侑くんがツッこむ。
そんな二人のやり取りを聞いてても、
さっきから。角名くんが隣にきてから全く落ち着かない。
お互いジャージを着ているとはいえ、
体はほぼ密着した状態にあるわけで。
ぶつかった時も思ったけど細身なのに、さすがは運動部。
その体はしっかりと鍛えられている。
ましてや高身長な角名くんと並ぶと、
自分との体格の差に胸がぎゅうとなった。
……あつい、
服をパタパタとしつつ深呼吸をしていると、
もう俺行くわ、と侑くんの声がした。
「えっ、もう行くの!?」
慌てて角名くん越しに侑くんを見る。
「試合前にアップすんねん。解説は角名にしてもらい」
そう言うと引き止める暇もなく、
侑くんは軽く微笑みながら行ってしまった。
次の試合までまだもう少し時間あるのに。
そんな急に、この状態で2人きりって……
ただでさえ落ち着いていられなのにっ!!!
んん、と侑くんが行った方を見つめていると、
「そんなに侑がいい?」
「……え?」
角名くんが小さな声で呟いた。
「俺、侑より上手に解説できるんだけど」
手すりに前屈みに寄りかかって、
目線は試合を向いているけど、
その言葉は真っ直ぐ私へと向けられていて。
心なしかその表情はムッとしているようだ。
え、これ。私の思い違いじゃなければ……
拗ねてる、よね……??
うそ、待って。本当に待って。
……かわいい。
そう思うと体は勝手に動いていて、
つん、と角名くんの頬を人差し指でつつく。
角名くんは目を見開くと、
手すりに預けていた体を少しだけ起こした。
そして何も言わず、ただ私の方をじっと見つめてくる。
「あ、ごめん…つい」
どうしよ。勝手に触るなよって思われたかも。
急に恥ずかしくなって手を引こうとすると、
角名くんの手が私の手を包み込んだ。
くいっと手を引き寄せながらニヤリと笑う。
「いいよ。もっと触っても」
「……っ!?」
まるで自分のほうに誘い込むような。
角名くんのその笑顔にまた顔が熱くなった。
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作者名:. | 作成日時:2020年1月29日 23時