26.痛がゆい ページ26
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あれから少し経った平日の午後。
体育の授業を終えて一人ゆっくりと教室へ帰っていると、
「おわっ！？」
廊下の曲がり角から突然、角名くんが現れた。
思いっきりドンッとぶつかってよろける。
バスの時同様、またしても可愛げのないぶつかり方をした。
「ごめんね。大丈夫？」
「うん。私も前方不注意だった、ごめんね」
「Aちゃんちっちゃいから見えなかった」
「あれ？なんかムカつく」
一緒に出掛けたもののお互いの関係が大きく進展するわけでもなく。
ありふれた日常を満喫していた。
けど以前と違うのは、あの日以来、
角名くんとは冗談が言い合えるくらい仲が深まったという事だ。
「いつもの二人は？」
「一人は忘れ物とりに更衣室。あと一人はトイレ｣
「それぞれに慌ただしいね」
体育の授業のとき女子は体育館の更衣室、
男子は各教室で着替えることになっていて。
女子は教室と体育館を行ったり来たり。
忘れ物をすると移動がなかなか大変だったりするのだ。
「……どしたの、それ」
「ん？」
角名くんが少し驚いた顔で赤くなった私の腕を指さす。
いま女子の体育の授業はバレーボールで。
昔からバレーボールをすると、
超絶素人な私の腕はよくポツポツと内出血を起こしていた。
硬いボールだとそれは尚更だ。
「ボールをレシーブしたら内出血しちゃって」
「あー女子いまバレーだっけ」
「うん」
「そっか。痛い？」
「んー痛いというより、かゆい」
「ははっ。痒いんかい」
腕をさすりながら答えると角名くんは目を細めて笑った。
角名くんってたまに無邪気に笑うよなあ。
ほんと見た目とのギャップに驚く。
「それ最初しっかり冷やして落ち着いてきたら温めるといいよ」
「へえ。そうなんだ、試してみよ〜」
そう言って角名くんを見上げると、うん、やってみて。と
優しい表情で微笑まれた。
「Aちゃんと勝負したら余裕で勝てそう」
「意外としぶとかったりして」
「いや片手でも勝てると思う」
「……強気ですね」
「俺一応バレー部ですから」
それでも片手で勝てるは強気すぎると思う。
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作者名：. | 作成日時：2020年1月29日 23時
