05.よろしくね ページ5
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「………ん??」
耳を疑いながらゆっくり視線を上げると、
こちらをじっと見つめる角名くんと目が合った。
……
いま、可愛いって言った……??
うまく思考が追いつかず、その切れ長の目を見つめる。
「侑から聞いたでしょ、俺のこと」
「え?……あ、侑くん?」
「うん。俺がAちゃんを可愛いって言ったこと」
侑くんの時は特に気にしなかったけど、
本人の口からだと流石に恥ずかしさを感じた。
「あいつがAちゃんに伝えといたって言ってきてさ」
ほんと余計なお世話だよね、と目を細めて笑う。
不意打ちのその笑顔に胸が大きく跳ねた。
まあ、確かに。
あの侑くんの発言は突然すぎて驚いたし、
私が角名くんの立場だったら本当に余計なお世話だと思う。
【宮侑被害者の会】を設立できるレベルだ。
きっと被害者は山のようにいるに違いない。
そんなしょうもない事を想像していると、
何だかおかしくなって、ふふ、と笑みがこぼれた。
しかし目の前に角名くんがいたことを思い出して、
咄嗟に空いてる手の甲で口元を隠す。
が、時すでに遅し。
上半身を前のめりにした角名くんが無言のまま、
じっと私の顔を見つめてきた。
目の前に。かなりの至近距離に角名くんの顔が近づいてくる。
うっ、と口元を隠したまま思わず身構える。
「な、なに?」
「いや?いいなって思って」
「………は?」
呟かれた言葉に口から手を離して顔を歪める。
彼はそんな私を見て、ぶはっと吹き出すと、
ゆっくりと屈めていた体を起こした。
「ま、可愛いと思ってるのはホントだから」
こちらに背中を向けながら淡々と呟く。
「これからよろしくね」
じゃあまた。
そう言って掴みどころのないオーラを醸し出して彼は去っていった。
なんか柳に風、暖簾に腕押しって感じだ。
よろしくとは一体どういう意味なのか。
あの言葉は本心なのか、からかっているのか。
モヤモヤしながら離れていく背中をじっと見つめる。
とんでもない置き土産をされた気分だった。
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作者名:. | 作成日時:2020年1月29日 23時