無所属動画投稿系女子

No.25 タクシー代 ページ25

Aside



｢今日はとにかく帰らしてもらうね｣





そう言ってはじめくんは立ち上がった




｢あ、うん、駅まで送ってく!｣





タクシーは周りに無くて仕方なく徒歩で駅まで行く事にした




雨は昼間よりも強くなっていてまるで私達の今の心情をあざ笑うかのよう




｢ごめんね、わざわざ
帰りのタクシー代｣





そう言って傘をさしながら話しているとはじめくんがお金を渡してくれた





｢あ、大丈夫、大丈夫!!
私が好きで送ってるだけだから｣





｢いいの、今日のお礼とお詫びも兼ねて｣





はじめくんは私が手渡しでは受け取らないのを察して私のカバンの中に入れた





｢あ、ありがとう
ごめんね、私が勝手についてきただけなのに｣



そう言って私は苦笑いをした



｢そんなことないよ、嬉しい｣



傘にあたる雨の水滴がうるさくて

あまり聞き取れなかった





｢雨、酷いなー｣




赤信号で止まっているとそれをしみじみ感じる



車が通るたびに水がかかる




｢本当にひどい天気｣






すると、強い風が吹いて私の傘が飛ばされた





｢あ、｣




私は反射的に傘を取ろうと身を乗り出した






｢危ない!!｣



はじめくんの声がした



横を見ると眩しいくらいライトを光らしたトラックがこちらに速いスピードで進んでいた





｢え?｣



よけられない
ひかれる




そう思い目を閉じた



すると、勢いよく後ろへと私の身体が引っ張られた







｢はじめくん?!｣



目を開けるとはじめくんの腕の中



｢危ないよ、気をつけないと｣





手を引っ張って身体を寄せてくれていたみたい





｢ありがとう、｣




傘はトラックにひかれてグチャグチャ


私もひかれていたらこんな事になっていたと思うと寒気がした




結局私は壊れた傘を持ちはじめくんの持っていた傘で駅に向かった

俗に言う相合傘?




｢ついたー｣


やっと駅に着いた


｢ありがとう、送ってくれて｣


はじめくんは右肩だけ雨で濡れていた

きっと私が濡れないように傘を寄せてくれていたんだろう






｢ううん、大丈夫だよ
じゃあまたね!!｣






｢うん、また｣





ひらひらと手を振るはじめくんを改札の外から見送った





｢じゃあ、有難くタクシーで帰ろっかな｣





私はカバンの中を見た




｢い、1万円?!｣



私のカバンに入っていたのは1万円札





タクシー代に1万円も必要ないのは知っていたはず
ましてや、行きに一緒にタクシーに乗ったのだから

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