花散る前に雪よ舞え【太宰治】

10.悪夢 ページ11

Asaid






い…痛い






此の人には勝てない





「や、やめて…」





私を殺めようとする黒い影


殺気に溢れていた









駄目だ

死んでしまう









「ん…」





カーテンから差し込んだ微かな光



朝…？









「また、此の夢…」







私が死にかけたあの日の夢









私はいつの間にか強くベットのシーツを握っていた








全然いい夢じゃなかったなあ





と思いながら私はベットを降りた









「太宰さん…もう行ったのかな」








リビングに行っても太宰の居る気配はない







私は何時もの事なので深く考えなかった







今日は新入社員の入社試験





私も早く家を出ないと




其のぐらいに思っていた









私は冷蔵庫からシュークリームを取り出す








「頂きます！」







そして座ってシュークリームを食べ始めた







矢っ張り美味しい




甘い物は大好き


シュークリームは特に大好き








前、お菓子やめようと思ったけど








「明日からでいいか！」







甘いお菓子など食べたことの無かった私にとっては至福の時間





前は道端に生えている雑草ですら奪い合う様な生活






今とは全然違う




あの時太宰さんが助けてくれたから良かったけど…






太宰さんは私を助けた事を全否定している






でも、昨日の夜に確信した





矢っ張りあの寒い日



私を助けてくれたのは太宰さん






あの温もり、太宰さんしかない







って何考えてんだ
私





太宰さんが違うと云ったら違うものなのに







ふと目に入ったテレビ




「災害指定猛獣？」



凄く短かったけど紹介されていた災害指定猛獣






そう云えば確か、新入社員は虎人間だったよね



其の人の事かな？


なわけないよね





それにしてもいいなあ
虎になる異能力なんて




交換して欲しいな
私の要らない異能力と





そしたら、皆に迷惑かけることもないのに



って
何も知らないのにそんな事云ったら失礼だよね



きっと彼も異能力について何かと悩んでる筈だから






「美味しかった」




私はシュークリームを食べ終わり食器を洗ってパジャマから着替えた






「戸締り、よし
行くか」




私は車椅子に乗って家を出た




「あれ、いない」




居るはずの場所に太宰さんはいない





「寝坊…した？」





時計を見る





時刻は待ち合わせ時刻の30分後








「…太宰さんに怒られる」

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