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安室さんは砕けたリンゴを見ながら、俺に尋ねる。


「あの子、なにか言ってたかい?」

「…振ったんだってね、安室さん」

「…そうだね」


否定をする気はないらしい。

少しぬるくなってきたコーヒーを一口飲む。

これは当人達の問題だろうと思っていた。

安室さんには安室さんの考えがあるだろうことは十分に理解できる。

だからなにも言うまいと思っていた。

だけど…

先程からミスを連発している彼を見上げる。

…こんなの、無干渉ではいられないだろう。


「なんで振ったの?Aお姉さんのこと」

「なんでって…コナンくん、あの子は未成年で僕は警察官なんだよ」

「淫らな行為に及ばない限り付き合うこと自体は違法じゃないよね」

「みだっ…」


安室さんがギョッとしてこっちを見た。

それを素知らぬ顔で流す。


「昨日あれだけ露骨に嫉妬してたくせに。僕よりも先に君に助けを求めたのか?って」

「嫉妬って…あれは別にそういうのじゃ」

「怖かったなぁ、あの時の安室さん。小学生相手に大人気ないよね」

「ご、ごめんって…それについては悪かったと思ってるよ」


安室さんは洗い終わったお皿を棚に片付ける。

いつものことだけど、この人はいまいち本心が読めない。

彼は俺に背を向けたままで、静かに言った。


「Aは両親がいないんだ。
学校での人との関わりも少ないみたいだし、多分1番近しい大人が僕なんだろう。それだけのことさ」

「…まさかAお姉さんの気持ちが勘違いだって言いたいの?」

「こんなところで僕を選ぶべきじゃないって言ってるんだ」

「本気でそう思ってる?」

「思ってるから振ったんだ。あの子は僕には眩しすぎる」


…ようやく考えが読めてきた。

彼の言いたいことは分かる。Aを大切に思ってることも。

それでも、頭の隅にはどうしてもさっきの同級生の様子が浮かんでしまう。


「…Aお姉さん、泣いてたよ」

「…君はやっぱり友達想いだね。本当にどこでそんなに仲良くなったんだい?」

「話を逸らさないで」

「逸らしてないさ。例え君だろうと、あの子を危険なことに巻き込んだら僕も黙ってないからね」

「……」


それについてはもう既に手遅れなのだが。

でもあれはAから言ってきたことなんだから俺に言われても困る。

安室さんは「サービスだよ」と俺の前に桜型に切られたリンゴを置いた。


「…意地っ張り」


最後にそう呟いた俺に、彼は苦笑いだけを返した。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時

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