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コナンside
「おい!A!?A!!」
短い悲鳴と、スマホが地面に叩きつけられる音。
数人の足音が響いた後に通話が切れ、サッと血の気が引いた。
まずい。今のは間違いなく何者かに連れ去られた音だ…!
「…っくそ!」
風呂上がりで髪が濡れているのも気にせずにスケボーを持って家を飛び出した。
杯戸駅の、までは聞こえた。
それに加えてあの音の反響具合。女の子を拉致れるほどの人通りのなさ。
十中八九、杯戸駅の地下通路だ。
街頭に照らされた夜道を走りながらスマホの通話ボタンを押す。
とりあえずあの人に知らせなければ。
「もしもし安室さん!?Aお姉さんが…!」
◇
通路の中に反響する自分の足音を聞き、やっぱり、と確信した。
きっとAはここで攫われた。なにか手がかりはないかと周囲に気を配りながら走っていく。
そんな時、視界の端でなにかが光った。
「コナンくん!」
焦りの混じった声が響く。
杯戸駅の地下通路で、と先程電話で話した安室さんが到着したらしい。
息が切れている彼は、バーボンの衣装を纏っている。
俺は床に落ちていた物を拾い上げ、安室さんに見せた。
「これ、蘭姉ちゃんがAお姉さんにって買ってきた修学旅行のお土産だよ…」
それは控えめなデザインの桜の髪飾り。
小日向さんにきっと似合うから、と蘭が買っているのを隣で見ていた。
これがあるということは、ここで連れ去られたのは間違いないだろう。
同じ結論に至ったらしい安室さんが頷く。
そしてスマホを操作しながら俺に尋ねた。
「とりあえず状況を聞かせてくれるかい?何故君がこんなところに…」
「あ、うん。えっと…」
そういえばまだ話してなかった。俺はその時のことを思い返しながら口にする。
「10時くらいにAお姉さんから電話がかかってきたんだ。誰かにつけられてる気がするって…」
しかし、そこまで言った時だった。
「は…?」
あまりにも冷たすぎる声が耳に届いて、ギクリと背筋が凍る。
…彼は、安室さんは、いつの間にか俺の方を見ていて、言ったのだ。
「───僕よりも先に君に助けを求めたのか…?」
「ぇ……」
凍てついた冷たい瞳の中に、怒りにも似たなにかがじわりと滲む。
容赦なく向けられた視線に、肌が粟立った。
予想外すぎる反応に言葉を失って、誰も通らない地下通路に沈黙が降りる。
やがて安室さんは、自分を落ち着かせるように深く息を吐いてから歩き出した。
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紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時