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降谷side
やっぱ長い髪は乾かすのに時間がかかるんだなぁとぼんやり思いながらドライヤーのスイッチを切った。
相変わらずサラサラの髪は、指を通してもひっかかることなく滑り落ちる。
Aの髪は手触りが良すぎて、髪結んでもらっていいですか?と頼まれると毎回ついついガチのアレンジをしてしまう。
そんな髪をいじりながらAに声をかけた。
「A、そういえばこの前のことなんだけど…」
『……』
「…A?」
しかし呼びかけても返事はない。
不思議に思って顔を覗き込む。
そしてもう1度名前を呼ぼうとして、慌てて口を噤んだ。
ぱっちりとした大きな瞳は固く閉じられている。
規則正しい呼吸音だけが聞こえてきた。
えぇ…寝てるじゃん。
ったく、自分の家で寝ろって言ったのに。
こいつ1回寝たらなかなか起きないんだよなぁ…
ため息をついて立ち上がり、Aの前に回る。
サラリと前髪を分けた。
血色の良い頬と桜色の唇が目に入る。
…ほんと、顔だけは無駄にいいんだよな。
そのまま真っ白な額に1度だけキスをした。
本当に一瞬、触れてすぐに離れる。
しかしその瞬間、バチッとAと目が合った。
「……」
『………』
さっきまで間違いなく閉じられていた瞳はガッツリ開いている。
すっぴんの癖にバカみたいに長い睫毛がゆっくりと数回上下した。
「……なんで起きてるんだよ、寝とけよ」
『人の寝込みを襲っといてそれですか』
ばっちりバレてたらしい。
なんだよ起きてたのかよ。いや今起きたのか。
Aは呆れたようにため息をついて小さく伸びをする。
そして何も言わずに立ち上がった。
「…怒らないのか?」
『なんで私が怒るんですか』
「いや、だって…」
『おでこにキス程度で怒んないですよ。
ていうか悪いのは無防備に寝ちゃった私でしょう』
ケロッとそんなことを言ってのける。
こいつ貞操観念ゆるすぎじゃないか?流石に心配になるぞ。
なんて俺の思考を読み取ったのだろうか。Aは帰る支度をしながら続けて言った。
『勘違いされてそうなんで言いますけど、降谷さんだから許してるんですからね』
「………」
『じゃ、時間も遅いですしそろそろ失礼しますね』
「…待て、送るって言ったろ。それに…」
言いながら立ち上がり、机の上に置いてあった小箱を手に取る。
「渡す物があるんだ」
キョトンとしているAの横髪を耳にかけさせ、青い小箱を開けた。
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びびか(プロフ) - この作品の作り込みが凄すぎて本当に好きです。。素敵な作品に出会えて良かったです!ありがとうございました! (2023年3月27日 20時) (レス) @page32 id: b527a1d6e3 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 想像するだけでこっちが照れてくる (2021年12月7日 15時) (レス) @page30 id: 9e519c38d5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ほぉ…これが降谷さんとの至高の領域だな???ちょっと最上級の語彙力調達してきますね?手持ちの語彙じゃこの素晴らしさは語れないので!!!! (2021年4月30日 23時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - あむむさん» 完結してからしばらく経ってるのに見つけてくれてありがとうございます…!!そんなに褒めて頂けるなんて嬉しすぎて私の心臓が取れます…!25機も消失してご無事ですか!?笑 最後まで読んで下さりありがとうございました!! (2018年11月9日 17時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
あむむ - 初めまして。どうにもこうにも我慢出来なくてコメント失礼します!泣きましたキュンキュンしました心臓取れました辛すぎましたその文章力に脱帽しました!25機くらいは消滅しました…!完結おめでとうございます。お疲れ様でした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: eaf01be664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年9月21日 21時