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寝不足とはいえいくらなんでもこれは酷い。
キスは流石に全力で止めた。
「新一くんは蘭さんのファーストキスも初体験も全部もらえるんだからいいよね」と呟かれたがなんとか無視した。
薬は明日には切れるはずだけど、もう早く戻ってきてくれAさん。
『お兄さんはなんのお仕事してるのー?』
可愛らしい声でそう問いかける彼女に、降谷さんは優しく答える。
「お兄さんはおまわりさんだよ」
『え!?おまわりさん!?すごいね!』
「そうかい?」
Aさんは急に顔を上げて頬を紅潮させた。
首をかしげた降谷さんに、彼女は大きく頷く。
『うん!だってAがいつも幸せに過ごせてるのはおまわりさんのおかげなんでしょ?』
「え…」
『おまわりさんはAたちの“幸せ”を守ってくれてるんだよね!』
目を丸くした降谷さんに、彼女は花が咲いたように笑って言った。
『いつもありがとう!おまわりさん!』
見ているこっちが見とれてしまうような笑顔だった。
降谷さんは目を見開いたまま固まる。
きっと、自分の職業を易々と人に言えない降谷さんは、その言葉を貰う機会なんてほとんどなくて。
いつも影で事件を未然に防ぎ続けている彼は、誰かにお礼を言われることなんてないはずで。
だから多分、その言葉と笑顔は俺が思うよりずっと深く心に染みたのだろう。
「……うん」
目を細めて頬を緩め、降谷さんは頷き返す。
そしてAさんの額と彼の額をコツンと重ね合わせた。
「…君がいるから僕は頑張れる」
言い終わってから、彼は今までで1番強く優しく、その小さな体を抱きしめる。
Aさんは不思議そうにしているものの、やがて小さく微笑んで降谷さんの頭を撫でた。
…あれ、なんか俺邪魔じゃね?
なんだかいい感じに収まった現場から目をそらす。
…ケーキ買いに行ってこよ。
(後日)
『どうしよう昨日の記憶がない。工藤邸にいたはずなのに降谷さんの家にいる。説明を求めます』
「昨日のお前めちゃくちゃ可愛かった」
『えっっなんですかそれ!?』
「俺にケーキあーんされてた」
『は!?私が!?降谷さんに!?』
「昨日はほんと素直で可愛いの塊だったんだけどな…どうしてこう…」
『話が読めないなんですか本当に何やったんですか私!!記憶がないのはなんで!?ちょ、人の顔見てため息をつかないでくださいよ腹立つなぁ!!』
リクありがとうございました!
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びびか(プロフ) - この作品の作り込みが凄すぎて本当に好きです。。素敵な作品に出会えて良かったです!ありがとうございました! (2023年3月27日 20時) (レス) @page32 id: b527a1d6e3 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 想像するだけでこっちが照れてくる (2021年12月7日 15時) (レス) @page30 id: 9e519c38d5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ほぉ…これが降谷さんとの至高の領域だな???ちょっと最上級の語彙力調達してきますね?手持ちの語彙じゃこの素晴らしさは語れないので!!!! (2021年4月30日 23時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - あむむさん» 完結してからしばらく経ってるのに見つけてくれてありがとうございます…!!そんなに褒めて頂けるなんて嬉しすぎて私の心臓が取れます…!25機も消失してご無事ですか!?笑 最後まで読んで下さりありがとうございました!! (2018年11月9日 17時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
あむむ - 初めまして。どうにもこうにも我慢出来なくてコメント失礼します!泣きましたキュンキュンしました心臓取れました辛すぎましたその文章力に脱帽しました!25機くらいは消滅しました…!完結おめでとうございます。お疲れ様でした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: eaf01be664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年9月21日 21時