055:バーベナ ページ10
完全に寝入ってしまった彼女を俺1人で運べるはずもなく、結果赤井さんの手を借りることにした。
沖矢昴の変装をした赤井さんは車から降りて軽々とAさんを抱き上げる。
…安室さんが見たら拳銃ぶっぱなしてきそうな光景だな…
赤井さんはそのまま工藤邸の中に入り、Aさんをソファに寝かせて息をついた。
「ギリギリだったよ。あと少し遅ければ酒を飲んで車を運転できなくなるところだった」
「酒…」
机の上を見れば、確かに飲む直前まで用意された酒。──スコッチウイスキー。
Aさんが飲んでいたのもスコッチだった。多分これは偶然じゃない。
スコッチといえば…世良がベースを習った人もスコッチと呼ばれていたっけ。
「…赤井さん、“景光さん”って知ってる?」
「景光…?」
「Aさんが言ってたんだ。“景光さんが死んだのは私のせいなのに”って…」
「……」
彼は心当たりがあるのか、顎に手を当てて深く考える。
やがて細めていた目を開け、小さな声で漏らした。
「…そうか、彼の名前は景光というのか…」
「彼?」
グラスの中で溶けた氷がカランと音を立てる。
赤井さんはその横の酒瓶に目をやり、少し間を置いてから答えた。
「コードネームはスコッチ。
公安警察だと組織にバレて自決した男だ」
「……」
「…今日は彼の命日だ」
そうか…だからAさんも赤井さんもスコッチを…
公安警察ならAさんと面識があるのも頷ける。そしてきっと安室さんとも…
「赤井さん、Aさんのことどこまで知ってるの?」
「……」
「鏡を割るほど込み入った話をしたんでしょ?」
彼は俺の問にしばらく黙り込む。
そして今度はソファで眠るAさんに目を向けた。
「…君から顔と名前を教えられた時はなにも知らなかったさ。だが偶然顔を合わせた時に初めて声を聞いて、全てが繋がった」
「声…?」
「だから彼女とここで話したあと、少し彼女のことを調べさせてもらったんだ」
赤井さんはグラスにスコッチを注ぐ。
表情からは感情は読めない。
彼は酒を一口飲んで、その言葉を口にした。
「赤井A。彼女は元公安警察だ」
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びびか(プロフ) - この作品の作り込みが凄すぎて本当に好きです。。素敵な作品に出会えて良かったです!ありがとうございました! (2023年3月27日 20時) (レス) @page32 id: b527a1d6e3 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 想像するだけでこっちが照れてくる (2021年12月7日 15時) (レス) @page30 id: 9e519c38d5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ほぉ…これが降谷さんとの至高の領域だな???ちょっと最上級の語彙力調達してきますね?手持ちの語彙じゃこの素晴らしさは語れないので!!!! (2021年4月30日 23時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - あむむさん» 完結してからしばらく経ってるのに見つけてくれてありがとうございます…!!そんなに褒めて頂けるなんて嬉しすぎて私の心臓が取れます…!25機も消失してご無事ですか!?笑 最後まで読んで下さりありがとうございました!! (2018年11月9日 17時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
あむむ - 初めまして。どうにもこうにも我慢出来なくてコメント失礼します!泣きましたキュンキュンしました心臓取れました辛すぎましたその文章力に脱帽しました!25機くらいは消滅しました…!完結おめでとうございます。お疲れ様でした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: eaf01be664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年9月21日 21時