顔が良ければ全て良しだと思うなよ！！ ２【降谷零/安室透】

070：マーガレット ページ25

愛してもらう価値なんて私にはないのに。

彼の隣にいる権利なんてあるはずもないのに。


本当はどうしたいのか言ってと言われてしまった。


『私の、本心…』


人差し指でデスクをなぞる。

溜まった埃が指についた。

ため息をついて頭を上げた。


監視カメラの隅に映る彼は戦っている。この日本を守るために。

あそこに。あの場に。

本当は景光さんもいるはずだったのに。

降谷さんと共に戦っていたはずなのに。

見ていて妬けちゃうくらい見事な連携で敵をなぎ倒していったはずなのに。



なんとなく、カラリとデスクの引き出しを開けた。

少しごちゃついた中はあの時から時間が止まっているようだ。

懐かしいな、なんて思いながら黒いボールペンを手に取る。

そんな時だった。


『…あれ？』


白い紙が引き出しの隅に挟まっているのが目に入った。

こんなのいつ入れただろうか。不思議に思って覗き込む。

辛うじて見えている端っこの文字は──


見覚えのある特徴的な｢H｣。


ドクンと心臓が鳴った。

まさか。だって、そんなわけ…！

震える手でその紙を引き抜く。

Hの先に顕になっていくアルファベット。



“Hiro”


『──っ！』


彼の名前の上にはかつて私が可愛いですね、とからかった少し丸みを帯びた文字。

そこに書かれている内容を見た瞬間、パタリと紙の上に涙が零れた。

恐らくNOCの疑いをかけられ、まだ証拠を掴まれていなかった頃にもしもの時のために入れたのだろう。


『もう…！なんで…っ！』


パタパタと涙は零れ続ける。

溢れ出るそれを止めようともせず、私は紙切れをギュッと胸に抱いた。


『もっとわかりやすいとこに入れて下さいよ…！』



“ゼロのこと、よろしく頼む”


短く簡潔に書かれた文章。

彼は優しすぎる。優しくて、強くて、朗らかで、本当に頼りになる先輩だった。


景光さん。

私は、降谷さんのそばにいることを許されますか？

あなたはいつものように、そのお日様の光みたいな笑顔で受け入れてくれますか？



涙が伝う目の端をこすった。

今すべきことは組織の壊滅だ。

全てはそれが終わってからだ。

そう思ってモニターに視線を戻す。


しかし次の瞬間だった。

スクリーンが真っ赤に染まり、イヤホンに爆発音が鳴り響いた。

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