066:キク ページ21
コナンside
「安室さん、どうするの…?」
俺と安室さんしかいないポアロの店内。
俺は食器を拭く彼にそう尋ねた。
彼をこっちを見ずにいつも通りの口調で答える。
「なんのこと?」
「…わかってるでしょ、Aさんだよ」
俺の言葉に彼の手が止まった。
「今週末だよ」
「…うん」
頷いて、また食器を拭き始める。
今週末。組織壊滅作戦決行日だ。
そこで組織を壊滅させることが出来たら、Aさんは安室さんの協力者をやめる。
もう会わないと言っていた。間違いなく本気だ。きっと、それこそ公安のように徹底的に、彼女は行方をくらませるだろう。
「…いいの?」
「……よくなくても仕方ないだろ」
「そんな…っ」
諦めたように吐き捨てた彼に、思わず椅子を倒して立ち上がった。
そんなこと思ってないくせに。本当は好きで好きでたまらないくせに。一緒にいたいくせに。終わりになんてしたくないくせに。
「安室さん、好きなら好きって言いなよ…!
このままじゃ本当にもう二度と会えなくなっちゃうよ!?Aさんだって、きっと本心じゃ安室さんといたいって思ってる!
ここでAさんのこと手放したら、安室さん一生後悔するよ!?」
彼の眉がギュッと寄せられる。
食器が少し強めに置かれた。
安室さんは自分を落ち着かせるように息を吐き、悲痛そうな声で言う。
「…わかってるさ」
「なら…!」
「わかってるけど、あの時みっともなく必死に引き止めてこれなんだ。なんとか期限を引き伸ばしてこの結果なんだ」
「……」
「その言葉を言うことすら許されてない。僕はこれ以上何を言えばいいって言うんだ」
「…安室さん」
でも、それでもこのまま終わりにするなんて。
初めはなんだこのバカップルと思っていた。
仲良いな、と呑気に考えていた。
なんで付き合わないの?と興味本位で聞いた。
好きなのに付き合わない事情があることを知った。
ハッピーエンドを、迎えてほしいと思った。
「だってこのままじゃ…誰も幸せになれないだろ…!」
思わず素のまま言った言葉に、安室さんが唇を噛んだ。
「縋りつけばいいだろ!みっともなくても、どれだけ拒絶されても、それでも安室さんは逃げないでよ!」
「……っ」
「Aさんのこと、好きなんでしょ!?」
安室さんは俯く。
重くて長い沈黙。彼の表情は、きっと俺なんかにはわからない心情で溢れていて。
「…好きだよ」
俺は、初めて彼の口からその言葉を聞いた。
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びびか(プロフ) - この作品の作り込みが凄すぎて本当に好きです。。素敵な作品に出会えて良かったです!ありがとうございました! (2023年3月27日 20時) (レス) @page32 id: b527a1d6e3 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 想像するだけでこっちが照れてくる (2021年12月7日 15時) (レス) @page30 id: 9e519c38d5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ほぉ…これが降谷さんとの至高の領域だな???ちょっと最上級の語彙力調達してきますね?手持ちの語彙じゃこの素晴らしさは語れないので!!!! (2021年4月30日 23時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - あむむさん» 完結してからしばらく経ってるのに見つけてくれてありがとうございます…!!そんなに褒めて頂けるなんて嬉しすぎて私の心臓が取れます…!25機も消失してご無事ですか!?笑 最後まで読んで下さりありがとうございました!! (2018年11月9日 17時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
あむむ - 初めまして。どうにもこうにも我慢出来なくてコメント失礼します!泣きましたキュンキュンしました心臓取れました辛すぎましたその文章力に脱帽しました!25機くらいは消滅しました…!完結おめでとうございます。お疲れ様でした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: eaf01be664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年9月21日 21時