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049:カエデ ページ3

明らかに照れてる彼を置いて話を進める。


「Aさんも安室さんのこと好きだよ。知ってるでしょ?」


俺のその言葉に安室さんは真面目な空気を感じ取ったのか、お皿を拭いていた手を止めた。

少しびっくりしたような表情。

しかしすぐに視線を下げ、Aさんと同じように頷いた。


「…うん、知ってる」


そりゃ知ってるだろう。安室さんが気づかないわけないし、Aさんは告白したって言ったんだから。

安室さんが彼女を振ったのなら、2人が両思いなのに付き合わない理由は恐らく安室さんにある。

そう思って身を乗り出して安室さんに畳み掛ける。


「じゃあどうして付き合わないの?」

「……」


安室さんは口を固く結んで何も言わない。

…やっぱり話してはくれないだろうか。

たっぷり数十秒。彼は俯いて黙り込み、ようやくポツリと零した。



「…先に逃げたのは僕の方だ」

「…へ?」


…どういう意味だろうか。

安室さんは浅く息を吸って続ける。


「Aの左手が動かなくなったのは、僕のせいなんだ」

「……」

「僕を庇って撃たれた」


息を飲んだ。

なら、Aさんの左手は撃たれた後遺症で…

まさか、それが安室さんの“理由”か…?

安室さんはそこで自嘲気味に軽く笑う。

カタンと小さな音を立ててお皿が置かれた。

そして続けられた言葉は、あまりにも予想外なものだった。



「それに、僕は1度Aに告白して振られてる」

「…え」


思わず目を見開いた。

嘘だろ?だって、Aさんは安室さんに振られたって言ってたのに。

だから理由は安室さんが持ってるに違いないって、そう思ってたのに。


どういうことだ。

もし2人とも嘘をついていないのなら、この人達はお互いに告白してお互いに振られたということになる。

おかしいだろ。なんでそうなるんだ。


そこでさっきの安室さんの言葉が脳裏に浮かぶ。

“先に逃げたのは僕の方だ”

そう言っていた。

安室さんがAさんを振って、その後に何かがあってAさんが安室さんを振ったってことか…?

もしかしたら“理由”があるのは安室さんの方だけじゃなくて、Aさんの方も…?


ダメだ、頭がこんがらがる。

絡まりまくった毛糸みたいだ。

目をグルグルさせる俺に、安室さんは軽く笑った。


「面倒くさいだろう、大人って。
二人揃って逃げ出したくせに何故かまだ一緒にいるんだ」

そして彼は、こう続けたのだ。


「でもきっと、それももうじき終わるから」

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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びびか(プロフ) - この作品の作り込みが凄すぎて本当に好きです。。素敵な作品に出会えて良かったです!ありがとうございました! (2023年3月27日 20時) (レス) @page32 id: b527a1d6e3 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 想像するだけでこっちが照れてくる (2021年12月7日 15時) (レス) @page30 id: 9e519c38d5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ほぉ…これが降谷さんとの至高の領域だな???ちょっと最上級の語彙力調達してきますね?手持ちの語彙じゃこの素晴らしさは語れないので!!!! (2021年4月30日 23時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - あむむさん» 完結してからしばらく経ってるのに見つけてくれてありがとうございます…!!そんなに褒めて頂けるなんて嬉しすぎて私の心臓が取れます…!25機も消失してご無事ですか!?笑 最後まで読んで下さりありがとうございました!! (2018年11月9日 17時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
あむむ - 初めまして。どうにもこうにも我慢出来なくてコメント失礼します!泣きましたキュンキュンしました心臓取れました辛すぎましたその文章力に脱帽しました!25機くらいは消滅しました…!完結おめでとうございます。お疲れ様でした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: eaf01be664 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年9月21日 21時

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