＊*97 ページ8
.
｢ごめん、俺の言い方がきつかった｣
廉くんに抱きしめられたと気づいた頃にはもう
はち切れそうに痛かった。
違う、違うのっ。
｢う、ううん。廉くんは何も悪くないっ｣
もうこれ以上、涙を隠すことなんて出来なくて
情けない声でそう告げる。
廉くんは驚いた表情で私の顔を覗き込んできて
私は廉くんの胸を押し離した。
｢ちょっと待ってA｢お、お願い···離して···っ｣
もう、私に触らないで···っ
これ以上、優しくしないで···っ。
｢無理。何で泣いてんの？｣
｢や、やだ、やだやだっ···離してっ、うっ、っう···｣
廉くんの優しさが、とてつもなく痛い。
｢今、廉くんといたくないっ｣
｢どうして？何で俺といなくない？｣
抱きしめられる腕から逃げようともがくのに
廉くんはそれを許してくれない。
強く抱きしめられて、さらに涙が溢れる。
｢だ、ダメだよ···彼女がいるのに···
私とこんなことしちゃ、ダメだよっ···！｣
｢何で？俺が好きなのはAやって言ったやろ？｣
｢でも···あの女の子と付き合うんでしょ？
廉くん、さっきそう言った···っ｣
私のことが好き？
｢言ってること、めちゃくちゃだよ···っ｣
そんな嘘は、つかないでっ···。
もう止まらなかった。
｢私は、私はっ、
廉くんのこと好きになっちゃったのに···っ。
他の女の子のとこ行かないでって
私のことだけ好きでいてほしいって
言おうと思ったとにっ···｣
次々と溢れ出す言葉たち。
今更言っても仕方ないのに
廉くんの気持ちはもうないって分かってるのに···っ
｢すぐに変わるような気持ちなら
言わないで、ほしかったっ···優しく···しないで···っ｣
私はなんて女々しい女なんだろうっ···。
自分が惨めすぎて、情けない。
数秒の静寂が、私と廉くんの間に流れる。
｢······A？｣
それを破ったのは
まるで信じられないと言うかのように
私の名前を呼んだ愛おしい人の声だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1694人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なっちゃん
| 作成日時：2020年7月29日 19時
