10 ペリドット ページ11
深夜2時。
草木も眠る丑三つ時に一定の速度で響く二重のタイピング音。
私はこっそりと周りに視線を巡らせ、ため息をついた。
よりにもよってこのタイミングで元カレ様と二人きり。今この場には彼と私だけしか残っていない。
少し離れたところにいる彼を盗み見て、目を逸らす。
いや別にこんなの初めてのことじゃないし。ただ残業で2人でいるってだけでそんなに意識する必要はないはずでしょ。
それよりさっさと仕事を片付けよう。明日の朝までに仕上げないといけないのだ。
気にしない気にしない、と自分に言い聞かせてひたすら仕事を処理していく。
しかし、眠い頭をブルーライトに起こされながらキーボードを叩いていたそんな時だった。
コトリとそばになにかが置かれた。
音のした方に目を向ければ、そこにはいれたてのコーヒー。
見上げれば、いつの間にか彼が立っていた。
「あんまり根詰めすぎるなよ」
『あ…ありがとう、ございます』
…本当によく出来た上司だよなぁ。
自分の席に戻っていく彼の背中をしばらく見送り、肩の力を抜いた。
うん、せっかくだからちょっとだけ休憩にしよう。
ありがたくコーヒーを頂いて1口飲む。
するとその瞬間、口の中に絶妙な苦さと甘さが広がって、思わずカップから口を離して真っ黒なそれを見つめた。
ミルクはなしで砂糖が3つ。私的コーヒーの黄金比。
…覚えててくれたのか。
たったそれだけのことでも嬉しくて、仕事の疲れなんて吹っ飛んでしまう。
そんな自分が心底嫌になる。
ぶんぶんと首を振り、まだ熱いコーヒーを一気に喉へと流し込んだ。
胸の奥が焼けるように熱いけれど、全部コーヒーのせいにしてカップを置いた。
はい休憩終わり!!仕事仕事仕事!!!よけいなこと考えるくらいなら集中しろ!!
パチンと頬を叩いて気合を入れる。
しかし、私が液晶画面を睨んだちょうどその瞬間。
「…あのさ、」
いきなり彼が席を立たないまま話しかけてきた。
『なんですか?』
彼の方を見ないままに返事をする。
どこか書類にミスでも見つかっただろうか。
さらに仕事が増えることを覚悟しながら続きを待つ。けれど、彼の口から飛び出してきたのはそんなこととは全く逆方向のものだった。
「…南と付き合ってるのか?」
『……は?』
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立夏(プロフ) - 明里香さん» わ〜!ほんとですね!ありがとうございます!!直しておきました!! (2019年1月22日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 43話に誤字がありました。「聞こえ気がした」ではなく、「聞こえた気がした」です。 (2019年1月21日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - でねぼらさん» ありがとうございます!可愛く書けたらなと思っていたので嬉しいです!! (2019年1月7日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
でねぼら(プロフ) - 夢主可愛い降谷可愛い (2019年1月7日 0時) (レス) id: eac5f4ad2f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - レッド・アイさん» わぁぁ3回も!?ありがとうございます…!!ほんと元カップルっていう距離感の微妙な関係が大好きで…ストライク決められて嬉しいです!!更新頑張ります!! (2019年1月6日 12時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年12月24日 21時