23話 ページ24
『私、観覧車って初めてです!綺麗ですね〜!』
そう言いながらAはガラスに額を当てて外を眺めている。
いつの間にかすっかり日も暮れて、眼下には夜景が広がっていた。
締めはやっぱり観覧車、なんてAの言葉に押されて乗ったがなかなかに綺麗だ。
そうしてしばらく時が過ぎた時に、Aが額を離して俺を見た。
『降谷さん、1日付き合ってくれてありがとうございました』
「…気は済んだか?」
『はい』
彼女は緩く笑って、すぐに真面目な顔に戻る。
昨日延々と考えていたことを言うつもりだろうことが伝わってきて、その瞳を見返す。
Aは小さく息をついて、口を開いた。
『シャトーが生きてることが世にバレました。
公安警察になってることも』
「…は?」
『あの日、運良く生き残った者がいたみたいで…』
予想外すぎる内容に目を見開く。
バレた?嘘だろ?あの中で生きてたのか?でも確かに、機関銃に撃たれた場所が良ければ可能ではある。
しかしAがシャトーであることがバレたってことは…
『情報なんてすぐ回りますからね。
これからは降谷さん同様、裏切り者として残党達に狙われることになりそうです』
ちっ、と思わず舌打ちをした。
面倒なことになったな。Aがやられる心配はしてないけど、湧いて出てくるあいつらは本当に煩わしいのだ。
「ていうかなんでそんな大事なこと黙ってたんだよ。昨日言えば良かっただろ」
『えっ』
「どうせ降谷さんに迷惑かけるかもーとかうだうだ考えてたんだろ」
『い、いや…それもありますけど…
すぐに割り切りましたよ、どうせ一緒にいるんだから私が狙われるようになったところで大して変わらないだろうって』
手を振って苦笑するAに眉根が寄る。
「じゃあなんで」
『え?いやあの…えっと…』
「…そいつになにか言われたか?」
『……』
…図星か。
じとっと睨んだが、Aは笑って誤魔化した。内容を言う気はないらしい。
代わりに少し目を伏せて俺を呼んだ。
『降谷さん』
「なんだ」
応えれば、彼女は顔を上げて俺の目を真っ直ぐに見る。そしてはっきりした口調で言った。
『私は私を許す気はありません』
「……」
『一生背負って生きていきます』
「…そうか」
今の言葉で何を言われたのかは大体察した。
多分それは、最も言われたくなかったセリフなのだろう。
もうとっくに覚悟を決めた様子の彼女にそれ以上言う言葉がなくて、黙って頭を撫でた。
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立夏(プロフ) - 利茄さん» ありがとうございます! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
利茄 - 面白い! 青井と犬子は、吹きましたww もう、最高ぉーーーー! もし、よかったら、私のも、読んで 下さい! (まだ、完成してないけど) www (2020年4月22日 0時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - りーぬ@天使が尊いさん» ありがとうございます!!犬井犬子のくだりの時はたまたまポアロの近くを歩いてただけなので行ってないですよ〜! (2020年4月8日 20時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
りーぬ@天使が尊い(プロフ) - すっっっっっっっごくおもしろかったです!!!!!31話で主人公ちゃんがポアロに行ったことないって言ってるんですけど犬井犬子のくだりのときに行ってませんでしたっけ??思違いならすみません(((^^;) (2020年4月8日 16時) (レス) id: 181f09b6df (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 立冬さん» お前wwwwありがとうございます!!!ww (2019年2月6日 17時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月8日 22時