22話 ページ23
薄暗い通路。
赤いインクの付いた壁。
鼻をつく消毒液の匂い。
後ろから回された腕がぎゅうううっと痛いくらいに腰を締め付ける。
『怖くない怖くないこれは偽物だから蹴っちゃダメ殴っちゃダメ攻撃しちゃダメ』
なんて呪文が延々とそこから聞こえてきている。
「…おい、A?」
『ひゃぁ!?』
「ちょ、痛い痛い痛い!!お前力入れすぎだ折れる!!」
脅かすつもりはなかったのに更に腕に力を込められた。
割とガチで痛い。ちょっとは手加減しろよこの脳筋。
お化け屋敷に入るに至ってAの方から引っ付いてくることを全く期待してなかったとは言わないが、流石にここまでのは望んでなかった。
俺にしがみついたまま1歩も歩こうとしないAを無理やり引きずって前へ進む。
うーん、ここまでビビるとはなぁ…想像以上である。
『もう今夜は寝れないですうう』
「はいはい一緒に寝てやるから」
『そういう問題じゃないぃぃ』
まぁでも、想像以上といえばこのお化け屋敷もそうだ。
思ってたよりずっと本格的で凝っている。
Aはもうほとんど前を見てないから内装なんて目に入ってないだろうけど。
最初の方はなかなか頑張っていたけど、何回かお化け役の人に脅かされて気づけばこの状態だ。
流石に少し可哀想になってきて、背後に声をかけた。
「そんなに怖いならリタイアするか?」
『い、いいえ!公安警察たるもの、リタイアなんて認められません!入ったからには最後まで行きます!』
「見上げた根性だな」
プライベートにまでそれを適応するのか。
けれどそう言うなら、と歩を進める。
と、腰に回されていた手の力が急に少し緩んだ。
『そうですよね、公安警察たるもの偽おばけに勝てなくてどうするんですか!
落ち着いて人の気配を探ればどこから出てくるかなんてわかるはずですよね!』
「気づくの遅くないか」
どんだけビビってたんだか。
Aはピタリと黙り、深呼吸する。
そして俺に隠れながらじっと前を見据えた。
『右側に1人、左に1人、後方に2人!』
俺の服の裾を掴んだ手は離さないまま、フッと勝ち誇ったように笑う。
『どこから出てくるつもりなのかわかればこっちのもんですよ!もう脅かされたりしな──』
しかし次の瞬間、恐らく自動の仕掛けが動き、バン!!と大きな音が真横で鳴った。
『うきゃあああああ!!!!!』
「いった!!バカA力加減考えろよ!!」
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立夏(プロフ) - 利茄さん» ありがとうございます! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
利茄 - 面白い! 青井と犬子は、吹きましたww もう、最高ぉーーーー! もし、よかったら、私のも、読んで 下さい! (まだ、完成してないけど) www (2020年4月22日 0時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - りーぬ@天使が尊いさん» ありがとうございます!!犬井犬子のくだりの時はたまたまポアロの近くを歩いてただけなので行ってないですよ〜! (2020年4月8日 20時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
りーぬ@天使が尊い(プロフ) - すっっっっっっっごくおもしろかったです!!!!!31話で主人公ちゃんがポアロに行ったことないって言ってるんですけど犬井犬子のくだりのときに行ってませんでしたっけ??思違いならすみません(((^^;) (2020年4月8日 16時) (レス) id: 181f09b6df (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 立冬さん» お前wwwwありがとうございます!!!ww (2019年2月6日 17時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月8日 22時