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6話 ページ7

ギクリと、思わず固まってしまった。

あったはずの家は、生まれ育った家は、跡形もなく消え去っている。

雑草だらけの空き地だけが、むなしく残されていた。


息が詰まった。

降谷さんの顔が少し歪んだことを気に留める余裕はなかった。

そのまま動けなくなってしまって、空き地をじっと見つめる。

海から強い風が吹き上げてきて、ようやくハッとした。



『………帰りますか』

「…A、」

『あ、そうだ。お魚食べるんでしたね。
この辺にはあんまりお店ないので、駅のあたりまで行かないと』

「おい、A」


降谷さんの声は頭に入ってこなかった。

もうそこを見ていたくなくて、顔を背けて踵を返す。

そして降谷さんを置いて足早に来た道を戻った。


あぁもう、なにやってるんだろう。

ご主人様の後を付いていくのが犬なのに。

1人ではしゃいで1人で突っ走って勝手に帰るだなんて。


そう思うのに、足は止まってくれない。

ぎゅっと拳を握って防波堤を歩く。

磯の香りがツンと鼻を突く。

波の音がやけにうるさく感じた。


バカみたい。

そりゃそうでしょ。残ってるわけないじゃん。

二人が死んだのはもう5年も前なのに。

なにも変わってないわけない。

自分が何年この町を離れてたと思ってるの。

調子に乗らないでよ。


目の前に広がる入道雲に惹き付けられるように歩を進める。

もうそれ以外、目に入っていなくて。

だから、本当に気づいてなかったのだ。

その声が耳に届くまで。



「おいバカ!前見ろ!!」

『へ?…うわぁ!?』


踏み出した先に地面はなかった。

眼下に広がるのは、降谷さんの瞳の色と同じ綺麗な青。

気づいた時にはもう既に遅く、体が前に傾く。


「A!!」


名前を呼ばれて手を引かれた直後、二人一緒に音を立てて冷たい水面に叩きつけられた。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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立夏(プロフ) - 利茄さん» ありがとうございます! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
利茄 - 面白い! 青井と犬子は、吹きましたww もう、最高ぉーーーー! もし、よかったら、私のも、読んで 下さい! (まだ、完成してないけど) www (2020年4月22日 0時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - りーぬ@天使が尊いさん» ありがとうございます!!犬井犬子のくだりの時はたまたまポアロの近くを歩いてただけなので行ってないですよ〜! (2020年4月8日 20時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
りーぬ@天使が尊い(プロフ) - すっっっっっっっごくおもしろかったです!!!!!31話で主人公ちゃんがポアロに行ったことないって言ってるんですけど犬井犬子のくだりのときに行ってませんでしたっけ??思違いならすみません(((^^;) (2020年4月8日 16時) (レス) id: 181f09b6df (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 立冬さん» お前wwwwありがとうございます!!!ww (2019年2月6日 17時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月8日 22時

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