最終話 ▽Epilogue ページ25
次の日の朝、私は自分の部屋…ではなく零の部屋で目が覚めた。
あんな話をした後に自分の部屋に帰る気になれるはずもなくて、一度返した合鍵をまた受け取ったのだ。
隣に零はいないけど、向こうから音が聞こえるから先に起きて支度しているのだろう。
ぐぐっと伸びをして、布団の中から這い出る。
顔を洗って歯を磨いたところで、支度を終えたらしい零が部屋から出てきた。
「あ、おはよ」
『…おはよ』
「俺、今日はもう出るから」
『そっか、いってらっしゃい』
玄関で靴を履く零のつむじを眺める。
昨夜はてんやわんやで、私の涙が止まってくれなくて、今になってようやく冷静に物事を受け止められるようになってきた。
…あれ?そういえば、私の方から零にちゃんと気持ちを伝えきれてなくない?
昨日のことを振り返りながら、ふとそう思った。
だって私は「はい」という返事しかしてないのだ。
これはちょっと…どうなんだろう…
なかなかに由々しき事態じゃなかろうか。
零が靴を履き終わって立ち上がる。
思い立ったからには今すぐにでも行動に移さなければ。
この時の私はまだ若干寝ぼけていて、羞恥心のパラメーターが少し狂っていて。
だから多分、あんな行動に出れたんだろう。
『零』
「ん?な…に……」
呼ばれて振り返った零のネクタイをグイッと掴んだ。
いきなり引き寄せられて零がバランスを崩す。
そうして近づいた零の頬に、ちゅっとキスをした。
『大好き』
「ぇ………」
耳元で囁いた。
零が目を見開いたまま固まる。
キスされた頬を抑えたまま微動だにしない。
…なんだ、意外と反応が薄いな。
おもしろくないなぁ。
そんな風に心の中で考える。
しかし次の瞬間だった。
ぼっと火がついたように、一気に零の頬が赤く染まった。
『え』
「な、なななな……っ!ば、バカ!朝からなにするんだよ!!!」
『ええ?』
そう言って零は顔を覆ってへたり込む。
え、ええぇ…そこまで照れられるとは思ってなかった…
髪の間から真っ赤になった耳が覗く。
相変わらずサラサラの髪を撫でて、思わずふふ、と笑った。
あー、やばいなぁ。やっぱり私、相当零に惚れてるらしい。
だって普段可愛くないキミが、なんだかとても可愛く見えたのだ。
fin
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ひなた(プロフ) - 読ませていただきました!初めてゴリラを好きになれた作品なので感謝しております!そして、少し気になったのが、「緑川」というキャラでおそらく諸伏くんの声優さんと名前がごっちゃになってしまい諸伏くんを緑川と書いたものだと思いますがそこが少し気になりました。 (2022年4月30日 21時) (レス) id: dd9bdc737b (このIDを非表示/違反報告)
りーくん - 待って最後の宣伝のやつ二つとも知ってんだけどwwww (2021年9月1日 21時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 椎名桃乃さん» わー!ありがとうございます…!そんなそんなもったいないお言葉ばかりですがとっても嬉しいです!見つけてくださってありがとうございました!どうぞお暇潰しにでもゆるりと読んで頂けたらと思います!笑 ありがとうございました! (2019年5月26日 18時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
椎名桃乃 - 狂犬ちゃんを読んでぼろっぼろに泣いて、それから此方の作品を見付けて、いい話だなーとほっこりさせて頂きました!立夏さんは文才力が半端ないですね…!他の作品も読んでみたいと思います! (2019年5月24日 21時) (レス) id: 87ecca1cfc (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウィンディ-lilac-さん» わぁぁありがとうございます!!とっくに完結した作品なのに見つけて下さって感謝しかありません…!本作は初めて書いた降谷夢なのでとても嬉しいです!狂犬の方まで本当にありがとうございます!これからもいっぱい文字書きますね!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月10日 21時