可愛くないキミの落とし方 ２【降谷零/安室透】

59話 ページ16

｢残念ながら。全く。これっぽっちも。｣


肩を竦めて首を横に振った。

昨夜２人で大泣きしたことは流石に言わない。

でもあれだって別に色気のあることをしたわけじゃない。

抱きしめはしたけど、そういうつもりはお互い全くなかったし。


コナンくんは俺の言葉に｢えー｣と不服そうな声を漏らす。

な、なんでそんな非難めいた声を受けないといけないんだ…



｢その犯人、Aさんにプロポーズしたんでしょ？
そこまでされたのに安室さん黙ってたの？｣


目で｢ヘタレ｣と言われた気がした。

だからなんで小学生にそんな視線向けられないといけないんだ！



｢そ、そんなわけないだろう。
ちゃんと言ったさ。
こいつは俺のだからあげないですって｣

｢え！？そこまで言ったのに何もなかったの！？｣


｢…………そういえばそうだな？
なんかすごい華麗にスルーされた気がする…｣



思えば完全に告白紛いのこと言ってるじゃないか…

いや、でもあのあとはバタバタしてたしそんな空気にならなかったもんな…

もう向こうも忘れてるかも…っていうか、あの鈍感バカ、気づいてなさそうだ。



｢あいつのことだし、俺の部下だから仕事は辞めさせないって意味に捉えてそう……｣

｢あーー……確かに｣


頷かれてしまった。

最早乾いた笑いを漏らすことしか出来ない。


｢今朝、Aさんの様子がおかしいとかなかったの？｣

｢え？うーん…｣


そう言われて今朝のことを思い返す。

意図せず見てしまったものが浮かんできたが、速攻で記憶の奥底にしまって真面目に考えた。



｢……あぁ、そういえば｣

｢なになに？｣


｢今朝のA、笑った時めちゃくちゃ可愛かった｣

｢…………。安室さん、ボクすっごく苦いアイスコーヒーが飲みたいなぁ｣

｢夜寝られなくなるよ？｣


いいから、と言われてアイスコーヒーの準備に取り掛かる。

今頃あいつはあの一件の後始末の多さに悲鳴をあげてるんだろうなぁとぼんやり思いを馳せた。

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