50話 ▽スノーバレット ページ7
あ、そうだプリンだ。
ふと幼き頃の思い出が頭に浮かんだ。
泣き虫悠太が私の後ろを付いてくるようになったきっかけ。
彼をぶん殴った喧嘩の発端。
あいつ、私の給食のプリン勝手に食べたんだった。
今から思い返せばなんともしょうもなくて子供っぽい理由である。
流石にこれには我ながら呆れてしまう。
あはは…プリン食べられて怒るって…いや、まぁプリン好きだったからなぁ。
そんなことを思い返しながら、私は雪がふわふわと舞う中、鼻を赤くした元同級生に頭を下げた。
『──ごめんなさい』
メモに書かれた連絡先にメッセージを送れば、彼はすぐに来てくれた。
口の中に苦い味が広がって、地に触れては消える結晶だけをひたすら見つめる。
『あの、本当に、お返事も遅くなってしまって…』
「…いえ、僕の方こそあの時は返事も聞かず逃げてしまってすみませんでした」
そんな言葉に思わず顔を上げた。
反対に、彼はヘラリと笑って小さく頭を下げる。
「ちゃんと振ってくれてありがとうございます」
『……』
「本当はなんとなくわかってたんです、犬飼さんには心に決めた人がいるって」
『え…?』
うそ。降谷さんがマープルに来たことは1度もないし、二人は会ったこともないはずなのに。
目をぱちくりさせる私に、彼は続ける。
「時々、電話してる人がいるでしょう」
『……』
「その時のあなたの顔を見てたらすぐにわかりましたよ。びっくりするくらい幸せそうに笑ってましたから」
わかりやすいですよね、と彼は軽く笑う。
私はグッと唇を噛んだ。
その電話の相手が誰かなんて考えなくてもわかる。
『あの人は…』
手を握り締める。あの人は、降谷さんは。
『私の、生きる理由です』
悠太は少しだけ目を見開き、白い息を吐いた。
しかしやがて目を伏せ、笑みを浮かべて言った。
「幸せになってください」
『…はい、あなたも』
多分、もう彼と会うことはないだろう。
きっとこれ以降、清水Aを知る人には会えない。
幼い頃の喧嘩の理由を笑い合うこともできない。
でも、今の私を全部まるごと愛してくれる人がいるから。
いつの間にか自分の肩に積もった雪を、軽く払った。
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かちかち太郎丸 - すきーーーーーー!!!!一気見させていただきました!!!!超絶大大大大好きです!!!ハッピーエンド最高すぎます、、、!素敵な作品ありがとうございます! (11月22日 22時) (レス) @page25 id: b4989b061f (このIDを非表示/違反報告)
みょん - 、、、天才がここにいる、、、終わりかたがすごい好きです!結婚後の話とか、映画の話とか書いてくれませんか、、、? (2022年6月17日 16時) (レス) @page25 id: 932e0b63ac (このIDを非表示/違反報告)
じゃむ - 間違いなく天才。だいすきです。あなたの夢小説に出会えて幸せ。 (2022年6月12日 22時) (レス) @page25 id: efa5817db4 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - 映画見てなかったらごめんなさい!!!!! (2022年4月24日 23時) (レス) id: 9795adedef (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - 今日一気見したら、今年の映画っぽくてすご!って思いました!犬飼ちゃん降谷さん大好きです!!! (2022年4月24日 23時) (レス) @page15 id: 9795adedef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年10月1日 22時