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49.青銅色 ページ9

「うん、そうだ忘れてた。警察官だった。小さい頃の夢」

「け、警察官?」


その答えは予想外すぎる。

組織の人間の口からそんな言葉が飛び出すなんて。

シャトーはうんうんと頷いて続ける。



「私ね、本当はおまわりさんになりたかったんだ」



えへ、と照れたように笑った。

ますますわけがわからない。

なんでこんなところにいるんだ、この子は。

おまわりさんに憧れてたのにこの組織にいるだなんて、敵側に回ってどうするんだ。

やっぱりどう考えてもポーラーに拉致られてきた可能性が一番高いのではなかろうか。


いや、落ち着け。

シャトーをこちら側に引き込むなら時間をかけて確かめてからだって決めたろ。

もしこれがトラップなら、声をかけた瞬間に終わりだ。

グッと拳を握った俺を気にせず、シャトーは言う。



「本当はこんなこと、口にするだけでもすっごく怒られるんだけどね」

「…なんでそれを僕なんかに?」

「なんでだろうね?お兄さんなら大丈夫かなって。
だってお兄さんの目は綺麗だから」

「またそれですか…」


そりゃそうだろう。

裏切り者には厳しいこの組織で、警察官になりたいだなんて、口にするだけでも許されることじゃない。


だからこそ、俺はこの時まだトラップを疑ってしまっていた。

そんなことしてる余地はないなんて、全く気づかずに。


シャトーは、またあの時のように顔を近づけてくる。



「安室透さん」


教えてから1度も呼ばれてなかったその名を、初めて呼ばれた。


「ずっとそのままでいてね?」

「え?」

「その目が濁ったりしたら許さないんだから」


わけもわからないまま頷いた。

満足そうに笑った彼女は、顔を引いて塀に飛び乗る。

行かなければならない時間らしい。その日はいつもより少し早かった。


「じゃあね、お兄さん」


そう言って、お面を少しずらす。

微笑んだ口元だけが見えた。

次の瞬間には向こう側に消えたシャトーに、なぜだか少し違和感を覚えた。


なんだ…?なにか、重要なことを見落としてる気がする。

そう思ったのに、俺は結局その時大して気にはとめなかったのだ。

あの時すぐに気づいて追いかけていれば、なにか変わったかもしれないのに。

いつもあの子が去り際に言っていた「またね」の一言がないと気づいていれば、どうにか出来たかもしれないのに。


その日を境に、シャトーは2度と来ることはなかった。

そして組織が壊滅した今まで、1度も会っていない。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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立夏(プロフ) - あかね。さん» 素敵なお言葉になんてお返しすればいいのかわからないくらい今すごい泣きそうになってます、本当にありがとうございます!実は私も当作品が1番気に入ってまして、今でも楽しんでくださる方がいるなんてとっても嬉しいです!長い間お付き合いありがとうございます!! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
あかね。(プロフ) - 何回目か分かりませんが、また読み直してしまいました。立夏さんのお話ほんと好きで、中でも狂犬が1番好きで、犬飼ちゃんと降谷さんがやっと掴んだ幸せに毎回涙します。素敵な作品をいつもありがとうございます! (2020年4月22日 13時) (レス) id: 639a2702b7 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いるかさん» わぁぁ完結して随分立っているのに見つけてくださってありがとうございます…!本当に嬉しいです!最後まで読んで下さってありがとうございました!! (2019年4月25日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
いるか(プロフ) - 素敵すぎる小説すぎて涙が止まりませんでした。これからも、応援してます(´;Д;`) (2019年4月24日 16時) (レス) id: 8c81b6610f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウツボカズラさん» 伏線褒めてもらえるなんて嬉しいです…!どちらも夢が叶ったハッピーエンドを無事お届け出来て安心しております笑 最後まで本当にありがとうございました!!これからも頑張ります! (2018年8月11日 1時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月2日 19時

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