あれから ページ4
…あんな出会いもあったような、無かったような…そんな曖昧な出会いをした私と衣更だった。
あれから漫画を通して仲を深め、気付けばこの学院で一番の友達になった私たち。
アイドルのみんなとも友達としての関わりを持てるようになり、転校当初の気疲れはもう無くなっていた。毎日楽しいんだ。
あの時の、明日話そう、その一言の勇気があったから今の夢ノ咲での私があるのだろう。あの日私の気持ちを察して、そこから居場所を作ってくれて、私と仲の良い友達になってくれた衣更には心の底から感謝している。
私が衣更に恋に落ちたのは、少し先の話。
「…衣更はさぁ、好きな女の子とかいるの?」
見開きで描かれた、漫画のヒロインのキスシーンをまるで近くで応援していた友達のような目線でニヤつきながら読んでいた私。ふと思ったのだ。衣更もヒロインのような恋をしているのだろうか。
夕日がさす2人だけの教室。縦に積まれた漫画が3冊、机の上に置かれている。肌をじわりと温める日差しと、私の髪をなびかせるクーラーの冷風が心地よかった。
「んー… どうだかな」
「なーんだその曖昧な反応?」
さてはいるんだな!と少し食い気味に聞いてみると、近くにあった書類で顔を隠す衣更。
「…いるよ」
紙越しに聞こえた微かな声に、書類を退かす手が止まる。
私の心臓の音が聞こえた。
ひらりひらりと冷房の風が紙を揺らし、衣更の表情を露わにする。
ほんのりと染まった頬。斜め下を向く大きな瞳がゆっくりと私の視線と合わさった。
「…っ、あ… ごめん、なんか…」
好きだなって、思った。
なぜだかは分からない。分かるはずもなく理由も何も無いけれど、本能がそう言うように、私は好きだという言葉が脳を駆け巡り、いつしかその言葉は恋へと変わっていった。
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作者名:すみれ | 作成日時:2018年7月11日 23時