であい ページ3
ぴたりと地蔵にでもなったかのように、身体が硬直した。
私の名を呼ぶ声が、確かに聞こえた。
なに聞かれるんだろう。なんで転校してきたか?どうしてここにいるか?もう飽きるほど答えた。なんだって良いじゃない、放っておいて欲しかった。
口を開けば、どうして?そう聞かれた今日一日は槍を浴びるような辛さだった。
普通じゃない子だからそういうことに興味を持ってしまうのはとてもわかる。私もできる限り答えた。
「…こんにちは、衣更…くん」
ゆっくり、ゆっくりと振り返り衣更くんと目を合わせた。
あぁ、とても綺麗。彼もアイドルという言葉が良く似合う容姿…
「あぁ、こんにちは。
その漫画…好きなのかなって思って
俺も好きだから、ちょっと話したかったけど
さすがに今日は疲れたよな、Aさん」
私が少しずつ後ずさりをするのを見て、疲れたと判断されたのだろう。
でも、こういう他愛のない会話は心が楽になる気がした。
「あ、ごめん…」
「ううん。俺の方こそ引き止めてごめんな
今日は大変だっただろうから、ゆっくり休んだ方が良いかもな
気をつけて帰れよ!」
にっ、と白い歯を見せて笑った衣更くんの向日葵のようなその表情に、体に入っていた力がほんの少しだけ抜けた。
「うん、ごめんね。それじゃあ」
さっきよりも軽い足取りで、じゃあな、という彼の声を聞きながら再び背を向ける。
顔だけ、衣更くんのの方に振り返った。
「私もその漫画好きだから、明日話そう!」
とだけ伝え、私は再び歩き出した。
おう!と背中越しに聞こえた声は弾んでいた。
彼はきっと、私のことを理解してくれていた。
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作者名:すみれ | 作成日時:2018年7月11日 23時