【あんスタ】『可愛い』魔法と王子様・短編集【逆先夏目】

◇▽波の魔法 ページ31

波を隠すほどの人も、焼け切った砂浜の感触ももうずいぶん感じていなかったんだなと思うと、少々感慨深くなる。


夏目くんと2人で電車を乗り継いで、海にやってきた。学院の近くの海とはまた違った良さがある。


予想以上に多い人に気圧されるものの、やはり海の魅力というものはすごい。私の頬は紅潮し、今すぐにでも泳ぎたい気持ちでいっぱいだった。



『夏目くん、はやく泳ご！』

「……残念だけど、ボクは泳がないからネ」

『せっかく来たのに、もったいないよ？』



その言葉に少々顔を赤くして「……泳げないノ！」と答える夏目くん。なるほど。



『じゃあ、私だけで楽しんできちゃうからね』



そう言って、足を波につける。ひんやりと冷たい水が、一瞬で暑さを和らげる。そのまま胸まで浸かってぷかぷか浮かぶ、くらげになったようだ。


水中を潜って見れば、魚や貝殻の姿。その中でも綺麗なピンク色の貝殻を拾って、レジャーシートの上に座る夏目くんに渡した。



『お気持ちだけでも』

「ありがたく受け取るヨ」

『……やっぱり足だけでも浸かろ！ね？』



我慢できずに、夏目くんの腕を引っ張る。彼の抵抗の声も虚しく、波が跳ねる。


それでもズボンの裾を巻くって入ってくれる彼は、本当に優しい。夏目くんの顔も冷たさに綻んだ。



『入ってよかったでしょ？』

「冷たいから笑ってるわけじゃないんだけド」



"楽しそうなにいながとっても可愛いから"



そう幸せそうに笑うあなたに、波に代わって攫われてしまいそうで、私だけがまた、顔を赤くするのだった。




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たるちさまリクエストでした！！
ありがとうございました！！！

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