三十六通目 ページ2
『え、え、ど〜しよ、ど〜する？』
帰ってきてから、1時間。お店の手伝いもしないで自室でぐるぐる考える。
『さすがに気まずすぎん？大丈夫？』
はへぇ〜……、とわけのわからないため息が出る。体が内側からむずむず、いらいらする。
『……その辺走ってこよ』
むずむずを鎮めたくて、ベッドから腰を上げた時、ドアが2回ノックされた。
｢カノ、今日の手紙とお花。なんか切手貼ってなかったけど……帰ってきてる？｣
『え……しらない……』
｢ふ〜ん｣
ちょっとでいいからお店手伝ってね、と、兄ちゃんはすぐに部屋を出ていった。
『え？』
切手貼ってないってことは、ポストに自分で入れたってこと？
『だって仕事貰ったの今日だし……連絡したにしても速すぎるし……』
つまり、昨日以前から帰ってきてたってこと
『……だよね』
なぜだかわからないけど、涙が出た。握りしめた拳の中で、手紙がぐしゃ、と音を立てる。
『ちょっと走ってくる！！』
｢あれ、手伝いは〜！？｣
兄ちゃんが叫ぶが、お構い無しに店を飛び出した。
拭っても拭っても止まらない涙を、もはや面倒だとそのままにして走った。
ESに行く？夢ノ咲に行く？一目あったら今まで言いたかったことを全部言ってやるんだ。
『やっと会える……！』
さっきまで、気まずいと散々悩んでおきながら、なんて都合のいい私だろうか。
これは仕事だ、と一瞬自分に言い聞かせるが、それ以上の感情が私を包む。
途中、誰かとすれ違ったが、涙でよく見えなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 374人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜乃茜 | 作成日時：2022年1月12日 23時
