王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ7)

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隠れ姫③ ページ7

私はあまり暇ではないので、とメガネレンズ越しに語るその目は鋭くあたしを貫く。

歩くスピードの速いこの先生からはぐれてしまわぬよう、あたしはパタパタと小走りになる。

なんてったってアイドルの卵を育てるこの校舎はバカがつくほどでかい。

何千人…は言い過ぎだけど普通校舎よりも生徒数は少ないくせに、アイドル校舎の方がでかいのは、不公平だっ！！

頭の中でなんでやねん！って1人でノリツッコミをしていれば、目の前の人は急にピタリと、まるでプログラミングされたように綺麗に止まる。

さっきも言ったけど、置いてかれまいと頑張って小走りしていたあたしは、もちろん急に止まれるはずなどない。

車と一緒で人は急には止まれないのよっ！
あたしの脚力というか足の指の力がダメなんだろうけどさ！？

「ここが音楽室です。私は職員室にいますので、使い終わったら鍵は私のところへ。場所はさっき通りましたし、分かりますよね？」

『え、いや…あ、はぁい。』

イエスしか言わせん、と今度はその目が語りかけてくる。

圧倒されて満面の笑みで"はぁい"としか言えなかった。

この手で確かに鍵を受け取り、ひとしきりお辞儀をしてあたしは音楽室の鍵を開ける。

中に入ってみれば、グランドピアノはもちろん、たくさんの楽譜にたくさんの楽器。

小学校で使うトライアングルとかタンバリン、カスタネットなど、アイドル科だから妥協はしないっていうように、1日で触りきれるのか！？ってくらい楽器があった。

音楽が恋人のあたしには勿体ないくらいの教室で、1人だという事に余計ウキウキしてしまう。

ある程度、何があるのか場所を把握し、使ってもどこにあったか、ちゃんと戻せるようにした。

そして後ろの棚から適当に楽譜ファイルを取りだし、あたしはそれをピアノの楽譜おきに置く。

あたしの得意な事は、作曲をすること、作詞をすること。
そして1番の武器は、楽器をあらかた弾けること。その中でもピカイチなのはピアノだった。

誰が作曲したのかも分からない。
もしかしたらアイドル科のユニットソングかもしれない♪

なぁんて思いながら、あたしは白黒の鍵盤をある程度楽譜通りに、たまにアレンジしながら、弾いて弾いて、弾きまくって！

たくさんの音符を自分の世界に連ねていく。

あぁ、そうこの感覚。
誰にも伝わらない、あたしだけの。

『最高の音楽っ！』