王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ35)

今日:12 hit、昨日:15 hit、合計:124,470 hit

お姫様の企みページ35

レッスンルームに戻り、保健室で言われたことを正確に泉さんがみんなに伝えてくれた。

末っ子すーちゃんは涙目になり、お姉様ァァァァ！と抱きついてくる。
凛月くんと嵐ちゃんは頑張ったね、と頭を撫でてくれた。

ごめんね、心配してくれてありがとう。それすらも言えない自分に腹が立った。
とりあえず、今は新しい策をねらなくちゃいけない。

泉さんの裾をクイッと引っ張れば、どうやら察してくれたようでそこら辺にあった紙とボールペンを手渡してくれる。

真っ白な紙を床に置き、必死にペンを走らせた。

元の作戦はこうだった。

・王様の意表を突くために、朱桜司を王とする。

・あの人はプリンセスライブを知っているから、今回はお姫様という役から降りて朱桜司と入れ替わるように騎士の立場に転ずる。

・驚いたことで王様が気の緩みを生じさせたのなら万々歳。あたしたちの勝ち。

作戦は至ってシンプルだった。

この作戦の鍵はあたしと末っ子すーちゃん。
本来騎士である人が王に、王に近い王女である人が騎士へ。
今回のジャッジメントで、王は間違いなくあたしになるだろう。

そんな、立場の入れ替わりを知ってしまえば、誰でも驚くはず。
昨日の集まりで衣装を見せつけ、余計に動揺をさせたのも作戦のうち。
誰が王になるのか、分からないようにするために敢えてあたしだけ衣装を着た。

そこで、磨き上げたアイドルスキルで、さらに王様を怯ませようというものだった。

のだけれども。

声が出なくなってしまった以上、この作戦は呆気なく使えなくなってしまった。

落ち度は完全にあたしにあった。

あの王様に勝つため、あの皇帝陛下に勝つため。
そうやって自分を追い込んだ結果がこれだ。

お姫様、お姫様と慕うみんなの、思うようなお姫様にあたしはなれない。

ここで、なんの前触れもなく、ふとひとつの考えが頭をよぎる。

そして頭の中で段々と作戦がねり上がっていく。
出来上がったそれは一種の賭けのようなものだった。

きっとアレを作ったあの人なら。
きっと今のあたしなら。

それだけに賭けるしか勝つ方法は無いと思った。

あたしは、作戦ではなく歌えなくなってしまったあたしのパートを埋めて欲しいことと、一騎打ちをする際は、気にせず自分だけを出して欲しいという事。

もちろん否定はされたが変える気はない。

そして無情にも、その日はやってくるのである。

.