三十六話 ページ44
政府に指定された商店街の町並みは多少の差異はあるものの、大体が同じであるように作られている。
これは効率よく建設、管理し運営するためのもので、滅多に無い例外を除いてゲートを含む役所絡みの施設は街の中央に設置されている。
「こんにちは。どのようなご要件でしょうか」
こちらに気付いた受付の平役員が愛想よく声をかける。政府の身近な顔役として人が良さそうな身なりをするのはいいが余りにも警戒心が無いのは減点だろう。
玄関口は一番人が集まりやすい、警備員が配置されているとはいえ危機感を持ってもらいたい。
特にこの街では尚更。
『帰還用のゲートを使いたい。ただ街に来る時、本丸からでは使えなかった。含めて使いたい』
もしかしたら使用できないかもしれない事も伝える。
「畏まりました。では身分証を提示してください」
慣れた手つきで古臭いパソコンに決められた文章を入力している職員にAは審神者として与えられた身分証を差し出した。
二十一世紀初頭に出てきたブラウン管モニターに入力され映り込む文字の羅列はいっそタイムスリップしたような錯覚をさせてくれる。
身分証に書かれた個人情報コードが末端まで全て入力され、残るは本人証明として指紋認証をこなせば済む手続きだ。
しかしそこで初めて愛想のよかった職員の表情が歪む。パソコンは質の悪いエラー音を吐き出して異常を知らせることしかしない。
「申し訳ありません、ただいま伯耆様の身分証は凍結となっております」
『…何かの間違いじゃないの。エラーコードは?』
「エラーコード…肆弐参ですね。凍結に間違いはありません」
愛想のよかった態度は一転して怪訝な顔になる。そういう分かりやすすぎる態度も減点対象だな、と内心で零す。
審神者の身分証の凍結に見に覚えないが、まさかこんなクソガキの癇癪みたいな真似を日も経たずにやられるとは思ってもみなかったAは舌打ちをうつ。
さてどうしたものか。平役員の彼に話すには余りにも言えない事ばかりで、伝えれる部分だけを掻い摘んで話しても余計怪しまれるだけなのは目に見えて明らかだ。
かと言ってAに暇を遊ばせる時間が無いのも事実で、本当嫌になるな、と考えていると男が話しかけて来た。
「あぁ悪い、彼女はこっちの管轄の子でね。君は仕事に戻って大丈夫だよ」
男の左腕に付けられた腕章を見て役員は、分かりました、と軽く頭を下げて受付の中の仕事へと戻っていった。
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うぇぽんぬ氏(プロフ) - 佐野さん» お気に入りとコメント、指摘とありがとうございます。言われてみれば"男侍らそ"は喋り言葉過ぎて伝わりにくかったかも知れませんね…迂闊でした!修正しましたので、今後も暇つぶし程度でもいいのでお付き合い頂けると嬉しいです。 (2017年6月14日 1時) (レス) id: 6ef3653dc5 (このIDを非表示/違反報告)
佐野(プロフ) - 初めまして。興味を惹かれるお話でした。お気に入り失礼します。ところで読みにくいかどうかのお話ですが、一点だけ。"男侍らせ"のところは"男を侍らせる"とした方がいいかと。少しの指摘で申し訳ありません。更新、無理のない程度に頑張ってください。 (2017年6月3日 9時) (レス) id: 144045511b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うず麿 緋◯ | 作者ホームページ:
作成日時:2016年1月16日 22時