十五話 ページ21
霊力が何らかの形で根源たる媒体から外に出た痕跡を霊痕と呼び、またその形状は様々である。水が上から滴り落ちたようなものも、染みのように滲み出たようなもの、粒子の細かい砂状から漏れ出す煙のようなものまで数えだしたら限りがない。
そしてこの霊痕は通常正しい手法以外での方法でしか痕跡が残らない。正しい手法とは数えだしたらキリがないが要は何らかの形で霊力を用いて術を使うことだ。正しい手法以外とは大体が霊力の持ち主に異常が来たしている事が大半である。
そしてもう一つ、霊力をもとに顕現した刀剣男士は人間と比べて漏れ出した霊力の穴を塞ぐことは出来ないということ。
『明らかに放出量が多いな…最悪霊力の枯渇で死にかけ、良くて昏睡手前か。燭台切、時間があまりない。』
「ああ…それは嫌でもわかるよ。」
燭台切の表情が曇る。どうやらこの状況を理解できているらしい。
Aたちがすぐに見つけ出せないのも理由がある。まずこの部屋が密閉空間のまま霊力が充満しているのだ。
先程あの男の瘴気とともに空気の入れ替えをしたといえ破損して充満している原因となっているへし切長谷部の器が見つかってない以上、何度部屋の空気を入れ替えようともへし切長谷部の器の穴を塞ぐか命が尽きない限りは止まらない。
いわば手詰まり状態と言っても変わりない。ましてや広くはないとはいえ、まるまる一部屋を充満させるほどの速さと放出量はどう見ても良い状況ではない。
完全に時間との勝負だがここで焦っても仕方ない。そう思ったAは簡単にだが書類まみれの部屋を片付けることにした。
『とりあえず書類は種類問わず机の上に、布団と座布団は押入れで私物っぽいものはこっちの籠の中に入れること。』
「窓も少し開けるよ。この時間帯なら外のほうが明るいし換気もできていいし…風は出てないから書類が舞うこともなさそうだね、良かった。」
袖を腕まくりしながら窓際へと向かう燭台切を横目にまずは足元に散らかるものから順に手を付けていく。一つ一つ集めると同時に簡単に書面に目を通すとあの男がしていた不正の中身が明るみになってくる。
あの男の経緯も含めいずれはすべて調べるつもりではいたが、まさかこんな所で思わぬ収穫が出来るとは思わなかった。
しかし今はじっくり見る時間はない。すばやく片付けてへし切長谷部の本体を探すのが最優先だ。
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うぇぽんぬ氏(プロフ) - 佐野さん» お気に入りとコメント、指摘とありがとうございます。言われてみれば"男侍らそ"は喋り言葉過ぎて伝わりにくかったかも知れませんね…迂闊でした!修正しましたので、今後も暇つぶし程度でもいいのでお付き合い頂けると嬉しいです。 (2017年6月14日 1時) (レス) id: 6ef3653dc5 (このIDを非表示/違反報告)
佐野(プロフ) - 初めまして。興味を惹かれるお話でした。お気に入り失礼します。ところで読みにくいかどうかのお話ですが、一点だけ。"男侍らせ"のところは"男を侍らせる"とした方がいいかと。少しの指摘で申し訳ありません。更新、無理のない程度に頑張ってください。 (2017年6月3日 9時) (レス) id: 144045511b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うず麿 緋◯ | 作者ホームページ:
作成日時:2016年1月16日 22時