十四話 ページ20
結果的に言えば男の霊力を完全に吹き飛ばすことに成功し、これで障害なく探索に入ることが出来る。
問題があるとすれば少々、と言えるのかは分からないが霊力を放出しすぎたが故にへし切長谷部の部屋だけでなく、近隣の部屋にまで霊力を渡らせてしまったことだろうか。
別に霊力を放出する事自体に害はない。ただ自室に篭もりきっている彼らは自分をよく思っていないのだ。そんな人間の霊力などを当てられて果たして黙っているかどうか…。
そう考え込むAを他所に燭台切は目の前の出来事に唖然とする。
けして前の審神者の霊力は量が多いとも質が良いとも言えない並ではあったが、それでもその人間は彼此7年もの間自分たちの主人をしてきた。
学も無く技術もあるとはいえなかった男だったが、彼の負の感情に対する貪欲さは目を引く程のもので、そんな男の長きに渡りこびり付いた霊力を、その7年もの歳月をかけて染め上げた付喪神をたかが一瞬で吹き飛ばす彼女を純粋に畏怖する。
これでAが多少なりとも疲れを見せていたら、ああ、彼女は全力で助けようとしてくれたんだと感謝するところであっただろう。だが彼女は一つも呼吸を取り乱さず、寧ろ何かを思案している様子でここに来る以前と変わらずの態度だった。
他の事を考える事が出来る程余裕があるのは一目瞭然で、ならば自分が見た今の出来事も彼女にとっては本の些細な。彼女の本気の一端にもならない、そんな程度だったのだろう。
一体、何処にそんな力を有しているのか。燭台切は末恐ろしくなると同時に心強くもあった。
彼女なら僕らを変える事が出来るだろうと、神の末端であるとは言え歪んでしまった僕らを彼女なら人間という境を越え正しく戻す事が出来ると。
勝手ながらもそんな期待を胸に燭台切は、とりあえず他事を考えている自分の主に声を掛けて探索の続きを催促するのであった。
◇
『にしても、こんなに散らかってるんじゃ例え存在感のある刀を探すとは言えど大変か…』
「彼の霊力を辿るにしても、これだけ彼のが充満してちゃねえ…」
あの男の霊力を飛ばしたからと言って根本的な解決にはならず、Aと燭台切はせっせと散乱した部屋を片付けていた。最も多いのは散らばった書類の海だが―――と言うより私物が少ない―――その中で最も目を引く物は矢張り…
『(霊痕、か…器が穴開き状態じゃあ最悪消失もあり得るな)』
Aの眼にはへし切長谷部の霊力の痕、霊痕が事態の悪さを物語っていた。
312人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うぇぽんぬ氏(プロフ) - 佐野さん» お気に入りとコメント、指摘とありがとうございます。言われてみれば"男侍らそ"は喋り言葉過ぎて伝わりにくかったかも知れませんね…迂闊でした!修正しましたので、今後も暇つぶし程度でもいいのでお付き合い頂けると嬉しいです。 (2017年6月14日 1時) (レス) id: 6ef3653dc5 (このIDを非表示/違反報告)
佐野(プロフ) - 初めまして。興味を惹かれるお話でした。お気に入り失礼します。ところで読みにくいかどうかのお話ですが、一点だけ。"男侍らせ"のところは"男を侍らせる"とした方がいいかと。少しの指摘で申し訳ありません。更新、無理のない程度に頑張ってください。 (2017年6月3日 9時) (レス) id: 144045511b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:うず麿 緋◯ | 作者ホームページ:
作成日時:2016年1月16日 22時