スキになったら負け！2【Hirano.S】 (ページ9)

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episode55 ページ9

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どれぐらい経っただろうか

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私の背中に回っていた紫耀くんの腕の力が
すっ…っと緩んで

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お互いの間に見つめ合えるくらいの距離が出来たら

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なにやら熱っぽい視線を向ける、

…オトコの顔。

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「紫耀くん？」

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逸らすに逸らせない目線に

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降参する様に彼の肩を押し返したら

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あっさりその手を取り纏められた。

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「…ん？」

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何も言わない彼に

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「どうしたの？」って聞く間も無く
重ねられる熱い唇に

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言葉にならなかった声が漏れた。

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いつも絶対に痛くはしないけど

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いつも以上にゆっくり、優しく

溶かされるような甘い口付けに

もう真夜中だというのに、

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いや、真夜中だからなのか

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あっという間に身体の中心がジンジン痺れて

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変わらぬ熱視線は

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さっきより優しく揺れて

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「舌…出して」

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言われるがままにすれば

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何か愛おしいものを愛でるように

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絡まる。

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「Aさん…」

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囁く時、

いつも以上にセクシーに聞こえる紫耀くんのハスキーボイスに

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「…ん？」

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「…ベッドいこ？」

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心のどっか、

言い表せないどこかがぎゅうって苦しくなって

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彼の誘いに頷いたのを合図に

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脇の下と、膝下に差し込まれた腕が
軽々と私を宙に浮かべて

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肌寒くなってきた最近着るようになった
黒いスウェットの胸元を握りしめた直後には

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ふわりとベッドの上に下ろされる。

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ぼんやりと灯る橙色のランプ

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ゆるゆると弾むスプリング

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駆けていくように上がる息に

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額から流れた汗が、
ぽつりと私の胸元に落ちて

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「Aさん、好きだよ。」

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耳元で聞こえた微かな声を最後に

ぷつりと記憶が途絶えた。

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