スキになったら負け！2【Hirano.S】 (ページ8)

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episode54 ページ8

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「今日はありがとね！気をつけて帰ってね〜！」

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「こちらこそありがとう！お蕎麦もおいしかった！またね！」

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お母さんやってる瑠奈の早め解散に合わせて、
22時過ぎにはお店を出た。

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終電はまだまだあったけど、
瑠奈とは電車も違うし

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駅で解散してから

紫耀くんの言う通りにタクシーを拾った。

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家に着いたらもうすぐ時計の針が23時を回るところで

まだ帰ってくる気配のない紫耀くんより先にお風呂に入って、

スキンケアも、ヘアケアも終わらせて

後は寝るだけの格好でスマホをぽちぽち。

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時計はさらに進んで
0時をとっくに過ぎて

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ソファの上で微睡んでいたところに
玄関の扉が開く音がしたと思えば

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「ただいまぁ」

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眠そうな顔の紫耀くんが
背負ってたバックパックをフローリングに落として

真っ直ぐ私に抱きついてくる。

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「…おかえり。でも重いよ紫耀くん」

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のしかかるように、
体全体を密着させて抱きついてくるから

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筋肉質な彼の身体は重たくて…

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潰されながらに絞り出した声にも

何も応答なし。

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規則正しく上下する胸、

息遣いから眠ってはいないみたいだけど

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「しょーくん？」

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だんまりな紫耀くんの顔を覗き込んだら

ぎゅっと目を瞑っていて

「ちょっとこのまま」

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たった一言そう言った。

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「岸くんの会、楽しかった？」

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抱きしめられたまま聞けば

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「楽しかったよ、サプライズも成功した」

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抱きしめる力は変わらず返事が返ってくる。

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「あのお店お蕎麦美味しかったね」

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「うん、だからあのお店にしたんだって。廉のリサーチだけど」

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「そっか、岸くんお蕎麦好きだっけ？」

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「うん」

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話し声は、

段々と弱まる。

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このところハードワークだったのはよく知っている。

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今日みたいにたまの空き時間はメンバーと過ごすことに割いて

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もちろん彼の性格上、
自分の身を削ってでも大事にしたい時間があるはずで、

実際今日の岸くんお誕生日会だって日にちが決まってから楽しみにしていたし…。

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でも、

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単純にきっと

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「…疲れちゃった？」

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私達以外
誰もいないのに、内緒話するようにそっと聞けば

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返事はないけど

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背中にまわる腕の力が、

ぎゅっと強くなった気がした。