スキになったら負け！2【Hirano.S】 (ページ19)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:36,571 hit

episode64 ページ19

・

・

「…おはよ」

・

「紫耀くんおはよ」

・

・

結局昨夜は

紫耀くんは私の膝枕で小一時間しっかり眠り
私の腿が痺れてきたころに

ふわりと起きて

微睡んだまま、というような不安定な視線を私に一瞬向けた後

重たそうな体をよろよろと傾けて

なんとか自分の足でベッドに向かい倒れ込んだ。

・

・

朝になって目が覚めた今、

「あれ…俺どーやってベッドまで来た？」

・

もしや…とは思ったけど

紫耀くんはそのことを覚えていないらしく

・

「え！まさかAさん、俺のことここまで運んだ？！」

・

「そんなわけないでしょ！笑」

・

・

「えーじゃあなんでここにおるん？
Aさんの膝で寝たはずやのにー！」

なんてケタケタ笑ってる。

・

・

でも

「せっかくの旅行寝てばっかだったね…」

・

帰りの車に乗り込んで
ハンドルを握った紫耀くんは

・

一泊二日を振り返って今度は苦笑い。

・

「でもゆっくり休めたなら良かったよ」

・

私が言うと
「ありがと」ってつぶやいて
車を走らせる。

・

あっという間に旅行が終わろうとしている。

・

・

都心に向けて順調に進む道路

このままだとカーナビが予想するより遥かに早く家につきそうだけど

・

・

ふと、

帰る場所も同じだと言うことに
嬉しくなった。

・

・

一緒に暮らし始めたばかり、と言うわけではないけど

・

一緒に暮らす前は、一回一回のデート終わりが
とてつもなく寂しかったな…って思い出す。

・

・

特に不規則に、時に突然訪れる
紫耀くんのお休みは予想もできなくて

・

帰り際、
「つぎはいつ会える」
なんて透明なものはなくて

・

あの時は
「これが最後かも」
なんてことが何度もあたまをよぎった。

・

・

でも今はそうじゃない。

・

・

「家ついたら、ジンのドラマでもみるー？」

・

家に帰ってからの予定だって
こんなにハッキリ立てられる。

・

・

「うん、観る！」

・

そう思ったら嬉しくて

・

紫耀くんが
一緒に暮らそうと言ってくれた

“あの日”のことを思い出して

・

思わず頰が緩む。

・

・

「なんで笑ってるん？」

・

・

前を向いてるからバレないと思ったのに

運転しながらチラッと私をみた紫耀くんは

・

「やらしー。笑」

・

何を思って笑ってると思ってるんだか。笑