スキになったら負け！2【Hirano.S】 (ページ15)

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episode60 ページ15

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ドレッサーを前にして

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お化粧をしながら私は浮き足立っていた。

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鏡越しに目があった紫耀くんは、

もうとっくに支度を済ませていて

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でも、早くしろとも言わず

揺れるゴールドのピアスを耳にかけて、
巻いた髪をふわりと広げたら

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なぜか嬉しそうにニコニコ。

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約半年間、
目眩がするようなハードスケジュールを駆け抜けてきた紫耀くんに

久しぶりに連休が与えられて

それに合わせて私も有給をとった。

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「おうちでのんびりする？」

少しでも身体を休めてもらえたら、と提案したのだけど

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「温泉とか行きたいなぁ」

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自然に囲まれて
リフレッシュしたいという希望で

東京から数時間、

一棟ごとに離れになったプライベートな温泉付きお宿を予約した。

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行きの車の中でも
紫耀くんからは鼻歌がこぼれて

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お宿について
部屋に入った途端

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被っていたキャップにサングラス、マスク全てを外して

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「自由ーー！！！」

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まだ新しい匂いのする畳の上に転がった。

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「ねぇ紫耀くん、浴衣がある！これで出歩いてもいいんだって！」

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しばらく着る機会のない浴衣に
少しテンションが上がった私に

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「着よー！」

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紫耀くんも起き上がって

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姿見の前に並んで帯を結んでたら

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「かわいい」

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急に愛おしそうな顔して紫耀くんが私を見る。

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「…紫耀くんもかっこいいよ」

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なんか恥ずかしくなって目線を逸らしたら

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「…なんか…やべーな」

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小さく呟いた紫耀くんが

「おっ、カートで周辺散策できるんやって。行ってみる？」

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話を逸らすようにテーブルの上の案内を拾い上げた。

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プライベートなお宿は
高級感があって、ハイテクで

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タブレット操作でカートの予約をしたら
無人運転のカートが部屋の前までやってきて

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それに乗り込むと、
お宿の周りの自然の中にをゆっくり進み出した。

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「無人運転なんてすごいね、最新」

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「俺ちょっと運転したかったけどね。笑」

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時速10キロくらいのスローペースで進むカートは
カタカタと心地よく揺れて

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「寝れるね、これ」

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そう言って笑いながらあくびをした紫耀くんが
こてんと私の肩に頭を乗せた。

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サラサラの髪が頬をかすめてくすぐったい。

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