スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ43)

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episode40 ページ43

sho side

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大好きなAさんの

色素の薄い瞳がゆらゆら揺れる。

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「いいよ。」

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なんでやろ？
その一言がどーしても口から出なくて

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「紫耀くん、おねがいっ」

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可愛く両手を合わせて

あらあら、もうフローリングの上に正座なんかしゃって

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それでも

「…やっぱり…だめ？」

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まだ首を縦にふらない俺に
Aさんも諦めたように小さくため息をついて

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「理央にやっぱいけないって断る。」

テーブルの上のスマホに手を伸ばした。

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職場で同期の理央さんに誘われたらしい
俺らの先輩グループのライブ。

突然行ってもいい？なんて言い出すから

「なんで？！ファンやったん？」

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初めは俺のことも知らんかったくせに
誰のファンだったんや！

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問い詰めれば
理央さんが友達と行く予定でチケットの申し込みをしたものの
その友達が仕事の都合でどうしてもいけなくなってしまったらしく

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職場で仲良しのAさんのことを誘ってくれたらしい。

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床に座るAさんのスマホには
【理央】のLINEが開いてて

あー今きっと断りの文を打ってるんやな…

そう思ったら

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なんか悪いことしてる気がしてきて

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俺は前々から彼女が他の人のライブにいくのも
許せないって愛の重さを公表してきたわけだけど

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そのせいでAさんがお友達のお誘いを断って

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お友達との仲が悪くなって

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仕事に行きたくなくなっちゃったら？

「……」

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大好きなAさんやのに、

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「理央と気まずいから仕事いきたくなぁ〜い〜！！」
って泣いてる顔が浮かぶ…

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「…やっぱり、行ってもええよ」

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「…え？」

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散々渋ったくせに
急に「いいよ」って言い出したから
Aさんも驚いて顔をあげる。

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「行ってもええよ、ただし好きになっちゃだめだからね！俺のAさんなんやから！」

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「ふふ、しょーくん、そんな心配してたの？大丈夫だよ。私の1番はいつも紫耀くんだよ」

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そう言って立ち上がったAさんが
わしゃわしゃと俺の頭を撫でた。

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なーんかまた子供扱いや。

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「でもどうして急に気が変わったの？」

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「だってAさんが仕事行きたくなっちゃったらいややモン！」

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俺がそう言ったら
Aさんは「ん？」って顔したけど

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……許してあげるの、今回だけやから！