スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ33)

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episode31 ページ33

紫耀くんの誕生日という一大イベントが過ぎ去ったら、

今度はバレンタインというイベントが目前に迫っていた。

・

雑誌のバレンタイン特集のページを眺めていた私に
紫耀くんは気を遣ってか

「なんもしなくてええよ」

なんて言ってたけど、

・

彼女として、

やっぱり何も無しは寂しすぎない？と思い

手作りじゃなくても、
チョコレートを渡そうかどうしようかと悩んでいた。

・

仕事帰り、
駅ビルの特設コーナーに並ぶ、普段ならなかなか手に入らない有名ショコラティエのチョコレートを眺めては

果たして彼は既成のチョコレートをもらって喜ぶのか……と思ったりもする。

・

自信過剰なわけじゃないけど
多分私が作ったら嫌でも「うまい！」「すごい！」って言うんだろうけど。笑

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悩みに悩んで分からなくなって
ホームに近いカフェで抹茶ラテを飲みながら

スマホでチョコレートを調べていたら

「あれっ、Aさんやんな？」

・

不意にそんな声がして振り返ると

キャップを目深に被った男の子が
チョコスコーンとコーヒーが乗ったトレイを抱えて私の隣に腰掛ける。

・

「…あっ、と？？？」

一瞬誰かわからず戸惑う私に

「あ、ごめんなさい、キャップとれないんやけど永瀬っす。」

口元を緩ませたのは永瀬くんで。

「(なんで！！！こんなとこに！！)」

驚きを抑えつつ小声で聞けば

・

「大学の帰りなんすよ。仕事までちょっと時間あったから休憩」

・

小さく手を合わせてから
大きな一口でスコーンを食べ始める。

・

「Aさんこそ、何してるんすか？」

少し顔をあげたときに見えるキリッとした瞳が私を見据えていて

「実はね…」

・

悩んでいたバレンタインのことを打ち明けた。