スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ27)

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episode27 ページ27

「私そろそろ帰ります。お疲れ様でした！」

・

同期にもう一度おめでとうを伝えると
そそくさとお店を出た。

さっき来たLINEには

shoAさんの会社の裏のパーキングにいる

そう書いてあったから、
会社の方へ戻る道へ向かおうとすると

「Aちゃん」

ふいに掴まれた腕。

…振り返れば山下さんで。

「さっきマジごめん。酔っ払ってすげー調子のった」

リバースでもしてきたのか
さっきより大分スッキリした顔の山下さんは

「あー、大丈夫です」

「彼氏怒ってない？迎えに来るんだろ？」

しょうくんのこと、気にしてて

「俺一緒に行って謝るよ。」

そんなこと言い出した。

「いや！大丈夫です！彼、怒ってないですし！」

でも、紫耀くんに会わせられる訳がないし

「いやでも、俺が謝りたい。」
「そんなの本当にいいですから！」

必死に拒否するけど
ずるずると私の背中を押しながら付いてくる(というより、歩かされてる)と

目の前に見慣れた車が見えて来てしまって

「本当に大丈夫！山下さんは早く戻って下さい！」

しつこい山下さんにどうしようもなくなっていると

・

「Aさん？何してるん？」

後ろから聞こえる声。

一時期を関西で過ごしたせいで
時々混ざるこの関西弁は、

「……紫耀くん」

彼以外のだれでもなくて。

「さっきは電話すみません。酔っ払っていて失礼しました」

「いえ、飲み会の途中なのに連れ帰ってすいません」

相変わらず夜でもサングラス姿の彼が
どんな目で謝る山下を見てるのか…分からないけど

「じゃあ、おやすみなさい」

私の腰に手を回して
怒るでもなく、ただ笑うでもなく
山下さんに会釈した紫耀くんは

「ほんと…心配かけないで」

呆れたように呟いて私を助手席に乗せる。

「紫耀くんごめん…。私最近謝ることばかりしてる…」

動き出した車の中で呟くと

「Aさんに電話したのに男が出るとか本当にナシだから！」

紫耀くんはそう言って私の鼻を摘んだ。