スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ24)

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episode24 ページ24

「そろそろ帰ろっか」

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バースデーパーティーは
まだお開きになった訳じゃないけど

予定されていたプログラムは全て終了して
あとは会場の時間が許す限り
恐らくだらだら長引く雰囲気で

多分私を気遣ってくれた紫耀くんが
主役へ一言御礼をすると
出口へ向かって私の手を引く。

「あれ～？紫耀たち帰るの～？」

その途中でさっき初めましての海人くんに見つかって

「ねぇ、Aさんすげぇ綺麗っすよねぇ～。そのドレス似合い過ぎてます！」

「えっ？…あ、ありがとうっ！」

紫耀くんよりも深い黒の瞳で真っ直ぐ私の格好を褒めてくれた海人くんに
ちょっと恥ずかしくなって

肩にかけて貰いっぱなしだった紫耀くんのジャケットを少し手繰り寄せる。

「え！ってか！紫耀っ……！」

ニコニコしてたはずの海人くんが突然驚いて、

その目線の先には繋がれた私たちの手。

「なんだよ海人」

「おれ、紫耀が女の子と手繋いでんの初めて見た！すげえ！廉に見せたいっ！」

多分メンバーの前ではクールな紫耀くんが
こうしてることがよっぽど珍しかったのか
興奮気味な海人くんは
すこし先で座ってスマホをいじってる廉くんの元へ走っていく。

「廉が来たらめんどいから行こ、Aさん」

「えっ…いいの？」

それに少し苛立った様子の紫耀くんが
グイッと繋いだ手を引っ張って

そのまま大通りへ出ようとする。

「ちょっ！ちょっと待って！」

さすがにパーティーの外でこれはまずい。

ここから先は誰が目を光らせてるか分からないし、
パーティーがあると聞きつけた記者が隠れてるかもしれない。

慌てて立ち止まると
繋がれていた手を振り解く。

「あっ…」

焦っていたせいか
思ったより勢いよく離れた手は
なんだか嫌な感じで

振り返った紫耀くんが

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……悲しい顔してる。

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「紫耀くんごめ…」

言いかけたところで
私に背を向けた紫耀くんは
そのまま私と距離をとったまま、
トボトボ歩きはじめて

丁度よくやってきたタクシーを停めた。

私の数メートル先でハザードランプを点滅させたままのタクシーは

発進することなく停まっているので
多分紫耀くんが待ってくれてる。

こんなことじゃ結局なんの危機管理にもなってないのだろうけど、
人気が無いか周囲を確認して

そのタクシーに乗り込んだ。