スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ23)

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episode23 ページ23

「紫耀～！Aさーん！」

会場に入ると、
ジンくんが手招きしてる。

周りにいる永瀬くん以外のメンバーも

「紫耀の彼女？」
「せやで。噂のAさんや」
「俺、はじめましてだわ」

私達をみつけると小さく会釈してくれる。

よく見れば、
そのほかの人たちもテレビで見るような方々ばかりで

緊張せずにはいられない状況……

「Aさん緊張してる？」
「当たり前でしょ…！」

となりの紫耀くんはへっちゃらな顔で
飲めないお酒を片手に色んな人と次々挨拶を交わしていく。

無事に主役の方への挨拶を済ませ、
広い会場のあちこちで自由な空間が生まれている。

紫耀くんも、関係者の人に捕まってなかなか戻ってこないから

なんとなく疲れちゃって
寒いんだけどショールを肩にかけてバルコニーへ出てみた。

こんな季節だし、好んで外へ出てる人なんて誰もいないけど

明らかに場違いな私には
誰もいないそこはホッとする場所になって、

並べられた木製の椅子に腰掛けて
さっき注いでもらったスパークリングワインを飲んでいた。

・

・

しばらくして、

「……はっ、ここにいた……っ」

・

後ろで声がして
振り返ると少し息を切らした紫耀くんが立っている。

「居なくなっちゃったかと思って心配した。寒いでしょ？なんでこんなとこいんの。」

・

心配性の彼のことだから
きっと私のこと必死に探したんだろう。

私の隣に腰掛けると
当たり前のように自分のジャケットを脱いで私の肩にかけてくれて

「……紫耀くんが寒くなっちゃうからいいよ」

ジャケットを返そうとする手を制されて

「いいよ。ここに出てるの、俺のせいでもあるかなって…思うから」

少し寂しそうに笑った。

「疲れちゃったよね？…こんなとこ来てもらってごめん。」

「ううん、滅多に経験できないことだから楽しかったよ」

ほんとは少し疲れてたけど、
そんなことを紫耀くんに見抜かれてたことが悔しくて誤魔化した。

「でもね、みんなAさんのこと綺麗だねーって言ってくれて俺めっちゃ鼻高かった！」

でも紫耀くんはきっとそんな私さえもお見通しで

わざと明るく振る舞うようにそう言うと、

「来てくれてありがと。…ドレスも口紅もやっぱすげぇ似合ってる」

力強い腕が私の腰を引き寄せて

誰も見てないバルコニーで

こっそりキスをした。