スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ22)

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episode22 ページ22

ピンクベージュのカーテンが開く。

着慣れないドレスに
なんだかそわそわしながら俯いていた顔をあげると

目の前の椅子に座った紫耀くんの
サングラスの向こうの目が笑った気がする。

「…ど…どう？」

恐る恐る聞けば、

「やっぱ思った通りだ。めっちゃ可愛い。」

そう言って立ち上がると

「これ買います！」

すぐそばにいた店員さんに声をかける。

・

・

…そう。

あの日永瀬くんに言われた通り、
紫耀くんは私をパーティーに誘ってくれた。

そして、仕事が早くおわったという今日
私を職場の近くまで迎えに来てくれたかと思えば

そのままドレスショップへ連れてこられ、

店へ入った瞬間、
近付いてきた店員さんに「頼んでたやつ、お願いします」なんて言うから
何かと思えば

「着て欲しいのあって」

って、試着室へ入れられて
女性店員さんに着せられるがままにこのドレスを着たのだ。

……真っ黒なシルク。
腰についた大きなリボンに
ざっくり開いた背中。
そんな大胆なデザインはすごく可愛いけど、ちょっと恥ずかしい。

ちらっと見えたドレスの値段、
決して自分では買えないその額に

「…ね、紫耀くん。本当に？」

当然のようにカードを渡してる彼に聞けば

「え？本当だよ」

当の本人はけろっとしていて

「よし、帰ろ。」

受け取った紙袋を持つと、
反対の手で私の手を引く。

・

・

帰りの車内で、
赤信号になると

「あ、そだ。あとね、これつけて欲しいの」

紫耀くんが思い出したように取り出した
小さな包み。

「開けていいの？」
「うん、いいよ」

結ばれたリボンを解くと
“深紅”の口紅が一本入っていて

「Aさん色白やから似合うと思って！あの真っ黒のドレスだけでも最強だと思ったんだけど、やっぱ俺のカラー入れてもらいたくなった(笑)」

少し照れたように笑う紫耀くんが
私に似合うものを考えてくれていたことが嬉しかった。

「ありがとう…」

なんのお祝いでもないのに、
たくさんプレゼントをもらった気分になって
少し申し訳ない気もしたけど

「パーティーの日はそのかっこで俺の隣におってよ？」

紫耀くんに少しでも似合う女性になれたらな…って
もらった包みをぎゅっと抱きしめた。